第2話

私がその『秘密基地』を見つけたのは、お月様がのびのびと空を照らす喧騒の一角だった。


そこは、夕方から大人達は酒を飲みたむろし、子供達は寄り付かず、たまに居る学生服を着た人達も、自分より弱いヤツから金を巻き上げるそんな最低な街で。私はその日は色々あって、取り壊しの決まったこの廃ビルに居たんだ。

私は、くしゃくしゃの紙にしわしわの服で、靴下も片方しか履いてなくて。ただ放心状態でそこにいた。

スマホを壊されていたので、手持ち無沙汰だった私は、何をする訳でもなくこのビルの階段を昇っていってさ。

そしたら、やけに雰囲気の合わない小綺麗な机とライトが目に止まった。3階だったかな。

興味を持った私はその机に近付いてみる事にした。机って言っても小さな簡易机だけど、埃の溜まった廃ビルには似つかない白い机で。多分最近買ったものなんだろうなって思った。

電池式のスタンド照明は、触れるとほのかな灯りを照らしてくれて、そこに置いてある一冊のノートを私に差し出したように感じた。


そして、その『秘密基地』を読み進めていくうちに。てんこ。に興味を持つようになった。

イタズラだろうし、書き込んでも返事なんて来ないだろうと思いつつ、照明の横に潜んでいた小さなペン立てに刺さったボールペンで、ぽつりぽつりと。1ページ分、書いてみた。


私にも、復讐したい相手がいたから。

そう、その日から私は、コトミ。

きっとそうだったんだと思う。

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一冊の要塞。 雪。 @konayuki_haku

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