第21話
「サンキュ! ナイスタイミング」
再び大地へと足を降ろした俺は、アニータと向かい合い、二人そろって【デーモン】を振り返る。
奴も俺が仕掛けたことに、今になって気付いたらしい。
「――え? あの、それ俺が帰るためのやつ……」
などと動揺した声を漏らす【デーモン】。
そこへ、街の奥の方から怪物たちの咆哮がこだましてきた。『焼却』されてもしぶとく生きていた連中だ。まだまだ出てきてもおかしくない。
――果たして、
「【ポータル】、ありがたく頂戴するよ!」
言って、俺はアニータに向き直る。
「転移座標の設定とかできないけど、一緒に来てくれる?」
「はい。ヘイボン様が行くところなら、どこへでも」
俺の問いに、アニータは迷いなく頷いてくれた。
二度目の転移もうまくいくなんて保証はどこにもない。
でも、きっと大丈夫。そんな気がするんだ。
【ポータル】のスイッチを押す。すると、電子的な振動音が響き、俺たちのすぐ真横に、人間が二人通れるくらいの【穴】が出現。
願わくば、次の世界でアニータの傷を治せますように。
俺は祈りながらアニータの手を取り、同時に【穴】へ飛び込んだ。
途端、周囲が闇に包まれ、まるで無重力空間に入ったかのような浮遊感を覚えた。
「恐いですか?」
アニータがそう聞いてきた。
「だ、大丈夫だよ」
「本当ですか? ヘイボン様は女の子ですから、真っ暗は苦手かと思いました」
「――実をいうと、少しだけ。でも、アニータが一緒だから大丈夫」
「安心してください。次の世界に着くまで、こうして守りますから」
なにも見えない闇の中、アニータが俺を抱きしめた。
俺も、抱きしめ返した。
FIN
ヘイボン&アニータ ゆう @TOYOTA1LRGUE
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