第20話
「――そら、終わりだ」
【デーモン】は鬼気迫る睨み合いも呼吸も無く、然も面倒そうに両腕を伸ばしてきた。
「アニータ!」
俺の合図で、アニータが耳打ちした通りに動く。
「はぁッ!」
彼女は人間の範疇を超えた脚力で飛び上がり、【デーモン】の顔を狙って蹴りを繰り出した。
「ッ!」
だが、【デーモン】が念じるかのように力むと、目に見えない謎の衝撃波がアニータへ放たれ、真正面からそれを喰らった彼女は身を捻り、ダメージをうまくいなしながらバク宙を切る形で後方へと退く。
【デーモン】の今の能力は、ショックバンカー開発の閃きとなったもの。
俺はこの一連の流れを利用して、【デーモン】の懐に飛び込んでいた。奴の腹目掛け、ショックバンカーをチャージした右腕を引き絞る。
「ショック――っ!」
「無駄だ」
【デーモン】がうんざりしたような声音で言うと、今まさに発射されるはずだった俺のショックバンカーが、――その最後の一発が、謎の力によって不発に終わってしまう。
【デーモン】は両腕を伸ばすことによって、意識を集中した相手に対して念力のようなものを作用させることができるのだ。
アニータを吹き飛ばしたように。そして俺のショックバンカーを無効化したように。
「――知ってる」
だが俺は、嗤う。
【デーモン】が念力を使う条件は両腕を伸ばすこと。
俺はまだ奴の懐にいる。人間よりも長い腕を持つ【デーモン】は咄嗟に腕を引っ込められない。それは、懐に潜り込んだ敵にすぐ対応できないのと同じ!
俺はこの一瞬の隙に、奴の腰にある【ポータル】を奪取。
ここで
なので俺はありがたくその衝撃波に身を任せて後方へと吹き飛ぶ。アニータの待つ方へ。
生身の人間なら内臓が潰れていてもおかしくないが、パワードスーツ着てるから平気なんだよね。
「――お帰りなさいませ」
と、吹き飛んだ俺を左腕で軽々とキャッチしたアニータが微笑んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます