第4話 スーパーのパックの魚に爪楊枝を刺してみた
「なるほど、お主は地球という異世界からやって来たという訳だな」
「はい」
ヒマリが俺の話をどこまで理解してくれたかは分からない。
だが、スマホというこの世界にはない技術を見せられたことで、俺がヒマリと別の世界の住人だということは認めてくれた様だ。
「これ、お前が地球で撮った動画というやつか?」
彼女はスマホで俺のYouTubeチャンネルにアクセスしていた。
「何だお前、この『千本桜歌ってみた』ってへたくそだな。おい」
「うわー! やめて! とめて!」
俺は耳を塞いだ。
初期の頃の動画だ。
再生回数2回の黒歴史だ。
ちなみにこの動画を観たのは2回とも俺だ。
ヒマリが観たことで3回になった。
嬉しくない。
「『男子高校生が大盛東京チカラめし食ってみた』。何だ、お主が飯食ってるだけか。激辛ソースでも大量にかければ見ごたえもあるのにな」
「『俺がももクロの凄さについて語って見た』。お主何様だ? お主が有名人なら皆見たかもな」
「『学校なんか行かなくていい!』。ふぅん。学校行かないと基礎学力も身に付かないしセンスのいい動画も作れんぞ」
俺はヒマリの矢の指摘を受ける度に、草むらの上をもんどりうっていた。
恥ずかしさと、情けなさで好みが引きちぎれそうだ。
「お前、底辺だろ?」
「ううっ」
「まぁ、わらわも底辺みたいなもん、否、底辺以下のマイナスかもしれん」
「え?」
一瞬、彼女は悲しそうな顔をした……。
「おっ! この動画面白いな」
彼女の顔が明らかに変わった。
その動画は俺が今まで投稿した中で最もバズッた動画だ。
『スーパーのパックの魚に爪楊枝を刺してみた』
この動画をアップロードした瞬間、再生数が急激に上がった。
1時間後には5万再生を超えていた。
俺は嬉しかった。
再生数が増える度に、俺の頭の中でアドレナリンが分泌され気持ちいい。
だが、いいねは少なかった。
反対に、よくないねが増えて行った。
再生回数は増えて行く。
俺は訳が分からなくなった。
伸び悩んでいた俺は、こういうイタズラというか迷惑系の動画が再生回数が稼げることを知った。
そして、ちょっとしたイタズラ感覚でこの動画を作った。
「通報しました」
「こいつ、バカじゃね」
コメント欄には批判が殺到した。
だけど、動画は削除されなかった。
俺は自分ではいいことをしたと思っていた。
ここのスーパーの店主は、俺の高校の奴を万引きの疑いをかけて捕まえた。
それが間違いだと分かったが、その店主は謝らなかった。
俺は天罰を与えたつもりでもいたし、何より再生数が増えているということは……
「観ているお前らも興味があるじゃんか」
そう思った。
つづく
もしも迷惑系Youtuberが異世界に転生したら うんこ @yonechanish
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。もしも迷惑系Youtuberが異世界に転生したらの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
近況ノート
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます