第5話

 そんなこんなで実家に帰った。

 親はなぜかよそよそしかった。

 それが僕には面白かった。


 それから一週間が過ぎた。

 父親が「お前に手紙だ。」と言った。

 「え?内容は何?」

 「『今日の午後3時までにペロ公園に来てほしい。』と書いてある。」と父親は言った。

 「ペロ公園?どこそこ?連れてってくれる?」

 「ああ。きっと楽しいよ。」


 2時半ごろ、ペロ公園にいた。

 人の声でザワザワしていた。

 目は見えないが、音からしてたくさんの人がいるのがわかる。


 2時50分の鐘の音の後、『ファ♯』のパイプオルガンの音が聞こえてきたのだった。

 それは良く聴くと3方向から同じ音が同時に聴こえてきたのだった。

 そしてみんなの声の調音。

 その後マイケルが作ったオリジナル曲の合唱。


…始まった…

…それは壮大だった…

…その音は大地を揺さぶった…


 自分はこんなに感動したことも、感動で涙を流したこともない。

 教会の3つのパイプオルガンの伴奏。

 それに付随する男女2つの何千人かというほどの歓喜の歌声。

 圧倒的だった。

 涙を流さなくばいられない、最高のハーモニーだった。


 歌が終わった後、久しぶりに3人で会った。

 3人でいると話は尽きない。

 いつまでも話していたいなと思った。

 

 出会いがある。だからこそメロディーが生まれる。

 そんな事をマイケルは思うのだった。                   ≪完≫



≪エピローグ≫

『おめでとう!』それはマイケルの心からの言葉だ。

「ありがとう。」トムとミキは言った。


お祭り騒ぎの初めての発表会があった2年後、ミキとトムは結婚した。

目では見えないが2人の声で、2人が幸せだということは解る。

そんな声を聴いているとマイケル自身まで幸せになってしまうのだった。

結婚式の夜、久しぶりに3人で話していた。

 その時のミキの打ち明け話である。

 最初の出会いの時、なんで自分の家からあんな遠い釣り場に来たのか。

 それについてミキは「人伝いにマイケルの話は聞いていたのよ。あの日もトムの友達から2人で釣りに行くらしいって聞いて行ってみたのよ。」と笑った。

 「それにしても最初の発表会はすごかったよねー(笑)。」とトム。

そう。最初の発表会の反応は凄かった。

 その年の内に『うちの地域でもやってほしい!』という地域が10ヶ所以上も声がかかった。

 マイケルは2人に相談してこれからどうしようか話し合った。

2人はマイケルにこれまでどおり実家で生活した方が良いと助言をした。

 最初は『なんで?』と思っていたが、実家での手紙の多さで事の大きさを実感し、2人の言う事を聞いた。

 ただ発表会は行った。

 それはマイケルが2人に発表会の実行委員になって行動してもらったのだった。

 その発表会の合間に3人で曲もたくさん作った。


 2人が結婚するというのを聞いたのは突然だった。

 ミキは「マイケルに最初に聞いてもらいたくて。」と言った。

 マイケルは心から「おめでとう!」と言って祝福した。


 2人の結婚後も3人は仲良くやっている。

 マイケルは言った。『2人に出会えて僕の人生、色付いた。』と。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

光りの音 ぱんちょ @pancyo999

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ