春を待つ 〜冬の暖かさとともに〜
俺氏の友氏は蘇我氏のたかしのお菓子好き
春を待つ 〜冬の暖かさとともに〜
雪が降っている。
しとしとだろうか。それともちらちらだろうか。
どちらにせよ雪が降っていた。
小屋の厚いガラスを裾で拭って、僕は外を見た。
雪は別に珍しくはなかった。
こんな山の中に住んでいたら、毎年冬になったら雪が見れる。
けど、いくつになっても初めての雪の日には嬉しくなるのだ。
僕はセーターの上に皮の上着を羽織って、手袋をはいた。
この地域では手袋ははくっていうのだけど、普通は手袋はつけるらしい。
靴下ははくのに、なんで手袋ははかないのか。
僕はずっとそれが不思議だった。
「いこう。」
僕は相棒であるシベリアンハスキーのハッスに声をかけた。
「ぐぅうーーん」
唸るような声を出しながら、ハッスが僕に鼻をこすりつける。
「よしよし。」
僕はかわいいなとその頭をなでながら、外に出た。
さくさく
と、心地の良い音が足元から響いてくる。
「わんっわんっっ!!」
ハッスは霜を踏み潰す感触がお気に入りで、草の生えている方に行って、興奮気味にはねていた。
「遠くに行くなよ。」
僕は一応声をかけて、自分も行きを堪能し始めた。
さくさく、きゅっきゅ
雪をリズム良く踏み潰して、平原を歩んでいく。
「わおーーーーん」
遠くからハッスの遠吠えが聞こえてくる。
「ふふふ、元気だな。」
僕はその姿を想像して笑みをこぼしつつ、雪を握ってみた。
両手でも掴みきれなかった雪が、握ったら片手で覆えるほどのサイズまで小さくなる。
手袋越しに伝わってくる冷たさに僕は懐かしさを感じる。
「あっ。」
僕は一面の真っ白の中に、優しい緑を見つけて声を漏らした。
「すごい……。」
僕は雪に押しつぶされながらも必死に春を待つ植物に、憧れのような気持ちを抱いた。
「頑張ってね。」
僕は自分にできるお手伝いということで、その緑の周りの雪をどかしてやる。
「…………………」
僕が雪の下から現れた見事な双葉に、感慨深いものを持っていると、
「わんっ!!」
後ろからハッスに抱きつかれた。
「もう! かわいいやつめっ!!」
僕はハッスを抱きしめながら、雪にボスンと背中から飛び込んだ。
「冬だね。」
僕は自分の息の白さに改めて四季を感じる。
「もうちょっとで春が来るんだ。」
きゅぅんと僕にかまってと言う顔を向けるハッスに、僕は語りかけた。
雪は楽しくもあり、厳しくもある。
冬は美しくもあり、儚くもある。
僕らには、この真っ白な季節が過ぎていくのを待つことしかできないから。
どうせなら、楽しまなくっちゃね。
僕は首筋を撫でられて惚けた顔をするハッスをみながら、そう思った。
春を待つ 〜冬の暖かさとともに〜 俺氏の友氏は蘇我氏のたかしのお菓子好き @Ch-n
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