幽霊と僕と別れの日

るぅな@暇人

奇想天外なようでそんなことない僕らの日常

僕のことは嫌い?

「当たり前じゃん。死んだ人間見て楽しそうにしてるあんたなんて嫌い」

そっか。まぁ嫌われてたとしても一緒に居なきゃ行けないけどね。

「あっそ」

――これが日常。いつもの会話…いや、会話というのはおかしいか。彼女はもう死んでいるのだから。

これは僕、レンヤと幽霊である彼女、カグラの奇想天外な…なんて言う冗談は置いて、ごく普通の日常を文字に綴っただけのちょっとした物語である。


――前置きも終わったことで改めて説明すると、語り手に当たる僕はレンヤ。至って普通(カグラは僕のことを普通じゃないと言うが)の高校生だ。カグラとは1年前に出会い、そのまま今に至る。何度も離れようと(主にカグラが)したのだが…まぁ上手くいかずに1年が経過しているというわけだ。

そして、そこの毒舌(なんて書いていれば後ろから訂正しろと声が聞こえたが無視しておこう)な彼女がカグラ。彼女も好きで僕といるわけじゃないらしい。


「んで?書き終わったの?」

まぁある程度は。けど急にどうしたの?

「別に?そんなしょーもない物書いて何が楽しいんだろって思っただけ。てかあたしは毒舌じゃないから」

じゃあツンデレに書き換えておこうか?

「はぁ!?馬鹿なの?ほんっとあんたと離れられたらいいのになんでこんな面倒なやつの近くに居なきゃ行けないかなぁ…」

――なんてブツブツ言うカグラを見てるとついにやけてしまうから困る。だってそれをカグラに見つかれば…

「何ニヤついてんの?気持ち悪いからやめたら?」

なんて書いていればいいタイミングで言ってくれた。さすがカグラ。

「うっざ…」

――まぁ僕だからね。なんて言ってしてしまえばそれこそ面倒なことになるから心に閉まっておくことにする。

「っと…誰か来るみたいだけど?」

――僕らが話しているこの教室は滅多に人が来ない空き教室。しかし部活生が道具を取りに来ることがあるため油断は出来ない。小さくカグラに分かったという風に頷けばその“誰か”が来るのを待つ。

ガラガラと扉を開ける音と同時に爽やかの声が聞こえてきた。入ってきたのは自身らの理解者であるアツヒコ先生で入ってくると同時にこんなことを言い出した。

『やぁやぁレンヤ少年にカグラ少女、今日も楽しそうでなによりだねぇ』

先生もお元気そうでなによりです。けどその呼び方やめてくれませんか?

「珍しくレンヤの意見に同意。そのよく分からない呼び方やめて欲しいんだけど」

『2人して釣れないなぁ…せっかく解決法が出てきたのに』

――こんな変人な先生だけど僕らのことを考えてくれているから信頼している。だけどこの先生は機嫌を損ねるとろくな事にならないため直ぐに謝っておく。


えっ!?ごめんなさい先生、その呼び方全然してくれていいのでその方法教えてください

「そんなにあたしと離れたいわけ?まぁあたしもあんたといる気は無いから教えて欲しいけど」

『そんなに教えて欲しいか?仕方ないなぁ…それはこれだ!』

――なんてドヤ顔で説明資料を僕らの目の前に置く。勿体ぶる必要はあったのかは不明ではあるが気にしていると進まないためあえて突っ込まずに資料を読み始める。


――えっと…?こういう事例の専門家がいる…?まさかの人任せ!?

「とうとう先生もお手上げ?人に任せるなんて」

――おいカグラ、バカお前っ…

『その通りだが?さすがに素人の私にはできることがもうないからな』

――開き直った!?えっ!?先生開き直っちゃった!?

えっと…先生、この方は…?

『私の幼なじみだよレンヤ少年。シオンって聞いたことないか?』

シオン…ってえ!?あのテレビによく出ている!?

『そう、あのシオンだよ。霊能者のアイツ』

「先生と幼なじみなんて知られたらシオンさん仕事無くなるかもね」

『カグラ少女!?私は変人じゃないし、というか私は関係ないだろう!?』

「あたしは変人なんて言ってないんだけど。もしかして自覚済み?」

『うるさいうるさい!私はそんなのには乗らんぞ!ほら、さっさとアイツのとこにでも行ってこい!』

――2人のやり取りを眺めていれば先生に早くいけと言うような目を向けられたので出発することにする。先生の反応に満足したのかカグラは上機嫌だった。

――そして数分後。僕らの目の前には大きな門が立ちはだかっていた。


すみませんー!アキヒト先生から話を聞いて来ました!誰かいますかー?

――なんて叫んでみれば大きな門が音を立てて開き、付き人のような人がアキヒト様のご紹介ですね。しばらく中でお待ちくださいと僕らに告げた。待ってる間辺りを見渡せば日本庭園のような雰囲気の庭に鯉の泳ぐ池とお城に行かないと見れないような光景が目の前にあることに驚きを隠せなかった。

「へぇ、やっぱりテレビに出てるだけあって相当稼いでいるのね」

稼いでるとか言っちゃダメだよ。でもほんとにすごいよね…カグラはこういうとこ来たことあるの?

「あんたから離れたことないんだからあるわけないでしょバカなの?」

そこまで言わなくても良くない!?酷いなぁ…

――なんてこんな会話ができるのも今日が最後かもしれないなんて思うと少し寂しい気がしなくもない。


*よく来たねぇ、私はシオン、夢原紫苑ゆめはらシオンだよ*

えっと、初めまして、アキヒト先生の紹介で来ました、レンヤです。こっちが…

「カグラ。さっさとこいつから離してちょーだい」

カグラ!!初対面でしょ!?

*ははは、元気でいいねぇ、私も昔は君らみたいな感じだったから懐かしいよ*

――落ち着いた声と紺色の浴衣が似合うシオンさんも僕らのような時代があったんだ…というかちゃんと見えてる!?さすがだなぁ…

*これでも霊能力者だからね*

――そうですよね…!ってえっ!?僕の心を読んでる!?

*どうだろうねぇ?君の想像に任せるよ?*

「素直に読んでるって言ってくれた方があたしは楽なんだけど」

*ははっ、ごめんごめん。さて、そろそろ本題に入ってもいいかい?カグラちゃんにレンヤくん、君らのようなオーラがほぼ一致するケースは少なくてね。たまたまカグラちゃんの近くにレンヤくん、君がいてオーラが似たもの同士言うなれば磁石のようにカグラちゃんは引っ張られてしまったんだと思う。磁石と言っても普通のでは無くてネオジム磁石のようなとても強力なものでね*

ネオジム磁石…なるほど…?

「引き合ってるから離れられないってことでしょ。んで?どうしたらいいの?」

――カグラの言葉に優しく微笑んでは僕らにシオンさんは質問を投げた。

*じゃあ問題、磁石を使いたいのにくっついているならどうする?*

「外さなきゃ行けないわね」

*そう。じゃあそれが強力で簡単に取れないとしたら…?*

えっと…それ以上に引っ張られるものを置く…?

*その通り。もっと強いものを近くに置くんだ。つまり君らを離すためにネオジム磁石よりももっと強力な磁石…いわゆる形代かたしろを作るつもりなんだ。そのためには君ら2人に共通するものが必要でね。何かあるかい?*

えっと…何かあったっけ…?

「あんたが持ってる中であたしも持ってたやつならそのカバンについてるクマの鈴とか」

えっ、これ持ってたの!?意外…カグラ意外と可愛いの好きなんだね

「うるさい。別にあたしが可愛いもの好きでもあんたには関係ないし別にいいでしょ。んで?そこの鈴じゃダメなわけ?」

*構わないよ。じゃあ少し準備してくるからその鈴を借りてもいいかな?*

もちろんです!お願いします

――なんて言って渡したのはいいけどお気に入りだったんだよなぁ…まぁいいか。また買えばいいんだ。僕らが普通の生活に戻るためなんだから…

「ねぇレンヤ」

僕のこと名前で呼ぶなんて珍しいね。どうしたの?

「最後だから言っとく。あたしのせいで色々不自由させてごめん。なんだかんだであんたと居れるの楽しかったよ」

カグラ…僕も楽しかったよ。人と話すのが苦手だった僕が話せるようになったのもカグラのおかげだし。今までありがとう。

――なんて真剣に話しているともう居なくなっちゃうんだなぁなんてしみじみと思ったり。今まで特別なことあったかって言われたらなかったような気がしなくもないけどそれでも楽しかったことに間違いはなかった。

*こっちの準備は済んだけど始めても大丈夫かい?*

――なんて最後に話していればシオンさんが帰ってくる足音が聞こえてきた。

はい、大丈夫です。

「そもそもコイツと居ていいことなんてなかったから別に大丈夫だけど?」

*そうかい。じゃあ始めるよ*

――そう言ってシオンさんは僕が渡した鈴をつけた形代に何やら呟き始めた。それと同時にカグラの体は少しづつ透けていく。これでもうおしまい。これからは普通に過ごせるんだ。なんて自分に言い聞かせようとするけども刺激のある生活が無くなるのは寂しかった。

「レンヤ、あんた面白いんだからさ。少しぐらいクラスの人と話すの頑張ってみれば?って最後だし言っとく」

わかった。努力くらいはしてみるよ。じゃあねカグラ


――そう告げた頃には彼女の姿は無くなっていた。人を寄りつけないようなオーラを纏ってて、けどちゃんと人のこと考えられる彼女が居なくなった。その事実を改めて感じた時、僕の目からは涙がこぼれていた。

*レンヤくん、ごめんね*

…シオンさんは…悪くないです…これでカグラは…

「はぁ…あんな言葉残して離れられないなんてね」

――なんて言ってくれたらどれだけよかったか…

って…えっ!?カグラ!?

*ごめんねレンヤ君、失敗してしまったよ*

「そういうことだから」

…僕の涙を返せぇぇぇぇぇ!

――まだまだ僕らの奇想天外に見えて意外と普通な日常は続くみたいだ。

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