第46話 等価交換
乗り込んでから10分ほど経っただろうか。
ふと外を覗くとそこにはまるで要塞のような巨大な城がそびえていた。
白を基調とされた左右対称のデザイン。まさに貴族というか王家が住むべきに相応しい迫力があった。
「こちらからどうぞ」
豪華な正門からは通らず誰も見ていないような薄暗い裏口から馬車は入城した。
例のパレードに対する対策なのか。
「うっわヤバっ凄っ!」
異常なほど高い天井。
高級感ある赤い長過ぎるカーペット。
時折ある多分価値のありそうな絵画。
「お帰りなさいませルルー様」
そして大量の……使用人。
もちろん女性はいないのでメイドなどおらず執事ばっかだがそれでも迫力がエグい。
それを過ぎた先にあるのは巨大な赤い扉。
開けばそこは考えられような広さの場所。
応接間らしいが……俺が思っていた応接間とは全然違う。
「では私は紅茶とクッキーをお持ちしますので。しばしのご歓談を」
「ご歓談と言われても……」
世間話など出来るわけがない。
目の前には第一王子が座っていて王家の屋敷にいるというとんでもない状況。
もし下手なことして怒られでもしたら……それこそ首が吹っ飛ぶ。
「それでえっと……ルルー様?」
「ルルーで結構です。畏まられると私も緊張してしまうので」
「了解ルルーちゃん♪」
遠慮なんて言葉が辞書にないレシリーは迷いなしに「王子ちゃん」から「ルルーちゃん」へと呼び方を変化させた。
「プルーフはあぁ言いましたが……私は早速本題に進めたいと思っています」
その方がこちらとしても助かる。
色々と知りたいことが山ほどある。
「先程話したパレードについてですが、あの組織をユウトさん達に倒して欲しいのです」
「何故俺達に? そんなに危険な組織なら近衛兵だとかに頼んだ方がいいと思いますが」
「近衛兵で収まるなら……楽だったんですがね」
「その言い方だと……近衛兵では敵わない相手ということですか」
「近衛兵だけではありません。ギルドにも依頼しましたが参加したAランクの冒険者は魔法派、武具派問わず全て撃破されました」
「Aランクが……!?」
Aランクの人達が全滅なんて聞いたことがないしあり得ない。
だがオペラハウスでの戦闘を考えると完全に否定も出来ないか。
「信じられない話かもしれませんがこれは事実です。上級魔法派はいませんでしたが……それでもそれに近い実力者の方々が手も足も出なかったのです」
「だからパレードの刺客から生き残った俺達を見込んで依頼したと?」
「いきなり過ぎる依頼というのは分かっています。ですが今の状況を覆せるのは貴方達しかいないんです!」
徐々に声が大きく、そして震えていきルルーの見つめる瞳からは涙が溢れそうになっていた。
「報酬ならば手帳以外にも叶えられる範囲であれば何でも致します。ですからどうか……私を救って欲しいのです」
ここで俺はどちらを選択すべきか。
多分重要な分岐点だと思う。
「はい」と言って自らまた危険な道に再び飛び込んでいくのか。
「いいえ」と言って王子を見捨てて自分の命を大切にするか。
「……ユウト貴方はどう考えてる?」
「決まってるよ、最初からな」
だが俺の心は既にどちらを選ぶか決まっている。
俺はその心情をルルーへとぶつけた。
「分かりました。俺達でいいならその依頼受けましょう」
「本当ですか!? ありがとうございます……!」
「ただ約束して欲しいことが3つほどあります」
「約束ですか?」
「1つ目にその手帳を必ず俺達に見せること、2つ目は大図書館を好きな日に俺達の貸し切りにすること。3つ目はこれからこの国内では多少の融通を効かせて欲しい。この3つです」
手帳は転生者への繋がりがある可能性が非常に高い。
大図書館はフリラードよりも天使などの秘密が眠っている可能性がある。
国内での融通はこれから俺達が動く際に王家がバックにいれば有利に働くはず。
その3つだけは対価として絶対に欲しいところだ。
「分かりました。そちらの約束は私が必ず果たしましょう」
よしっ、約束は取り付けられた。
上級魔法派の立場にプラスしてこの人が後ろにいればより有利になれる。
「ユウトさん、ユリエスさん、レシリーさん、よろしくお願いします……!」
「っしゃぁ! 盛り上がってきたねぇやろうよマスター、ユリエス、パレードぶっ潰すよ!」
「言われなくもそのつもりよ」
「あぁ絶対に達成させよう」
自分のため、ユリエスのため、レシリーのため、何よりルルーのために。
俺はパレードを倒す決意を改めて固めた。
男だけの世界に転生しましたが男の娘がいるので問題ありません スカイ @SUKAI1234
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