第45話 死のパレード

「パレード?」


 ずいぶんと愉快そうな名前だが暗殺組織だと……?


「エスラルドで暗躍している組織ことで「ルルー様ァ!」」


 話し始めようとしたルルーの口を遮るような初大声が響き渡る。

 何事かと振り向くと遠くからちょび髭を生やした明らかに執事と思える格好のした紳士が全速力でこちらに向かっていた。


「ルルー様ここにおられましたか! 後はこの私、プルーフにお任せを! パレードめ……ここまでやってきたか!」


「えっ? あっいや俺達は介抱していただけで「否!」」


「ルルー様に触れるとは何という侮辱! その首を持って詫びるがいい!」


「えっ……」


 ……いずれこうなるとは思ってた。

 たとえ王子が温厚でも周りが同じくそうだとは限らない。


 いや多分、この執事が普通の反応だ。

 一国の後を担う王子にこんな絡んでたらそりゃこうなる。


 プルーフと名乗る人物は怒りに染まった顔で先が針のように尖ったレイピアを向ける。


「情け無用! 覚悟ォォォォ!」


「ちょ!?」


「待ってプルーフ! その人は命の恩人なの!」


「えっ……?」


 ルルーがそう発した瞬間、鶴の一声のようにプルーフの動きが止まり今度は困惑の表情に変わっていた。


「命の……恩人ですか?」


「その人達はパレードじゃない! 寧ろパレードから私を救ってくれたの!」


 ルルーからこれまでの経緯を話されるとプルーフはようやく物騒なレイピアを鞘に入れてくれた。


「なるほど……大変申し訳ありません。私の早とちりでご迷惑を」


「俺達は大丈夫ですよ。というより貴方は?」


「これはこれは申し遅れました」


 そう言って直立に立った姿はとても優雅で上品な雰囲気がこれでもかと醸し出している。


「第一王子専属従者:プルーフ・セリムと申します。この度はルルー様を救っていただきありがとうございます」


 190に近いほどの高身長。

 引き締まった理想のウエスト。

 完璧な身体のフォルム。

 大人の色気や余裕が出ている綺麗な白髪。


  まさに仕事が出来る人というか、エリートというかそんな雰囲気が漂っていた。


「そのバッチは……まさか上級魔法派でございますか?」


「えっ? あぁまだなったばっかりですけどね」


「なるほど……やはり上級魔法派の方々は聡明なのですね」


「そ、聡明?」


「良かったじゃない。好印象持たれてるわよ?」


 まだ俺達のこと何も言ってないのにこのバッジだけで信頼された。

 このバッジ……というより上級魔法派ってそんなに世間からのイメージが良いのか。


 王家関係にも信頼される立場の位になれるのであればあの凄まじい受験人数と高すぎる倍率の理由も分かる。


 本当に合格していて良かった……。


「しかしルルー様なぜ無断で出ていかれたのですか! 危険な立場にいるというのはルルー様が一番分かっていられるでしょう!」


「ごめんなさいプルーフ……でも一度は聞いてみたかったの……。 あの音楽を、たとえ危険だと分かっていても」


「貴方はこの国の未来を担う人なのです。いっときの欲のために自ら危険に晒すとは……褒められるべき行いではありません」


「分かってる……ごめんなさいプルーフ」


 自らがバレないようにしてた服装から予想はしていたが、やはり無断であのオーケストラに来ていたのか。


 しかし何処かでその情報が流れてしまい絶好のチャンスと思ったパレードに狙われたと……。


「あの何があったんですか? そのパレードっていう危険な組織に狙われるなんて」


「この国、エスラルドには1000万にほどの民衆が存在します。ルルー様を歓迎する者がいれば対照的に快く思わない者もいます」


「その後者の過激な人達が……パレードと?」


「はい、黒い衣装に見を包み紋章を身体に刻んでいる暗殺組織。諜報員の情報によるとどうやら3に発足したようです」


 えっ……?


「3年……前!?」


 あの転生者の年月。

 ルルーが持つ日記には3年前の転生者の記録がある。


(どういうことだ……?)


 偶然重なっただけなのか?

 いや偶然という言葉で片付けてよいのだろうか。

 無限回廊からあの転生者には不自然と言える行動がある。


 もしパレードと転生者に関わりがあったとするなら……?

 ますます転生者に対する予想が黒くなっていく。


「ユウト? ユウトってば」


「えっ?」


「ちょっとなにをぼーっとしてるのよ」


「わ、悪い少し考え事をな……」


「立ち話もなんですしここからはお屋敷で話をしましょう」


「お屋敷?」


「その名の通りですよ。こちらへどうぞ」


 プルーフは遠くにある大型の高級そうな馬車へと俺達を誘導した。

 ルルーもその提案に即答で受け入れた。

 

「うわぁお屋敷かぁ! 凄いものとかいっぱいあるのかなー?」


 「王室に行く資格はない」という理由で拒否しようとも考えたが……話が変わった。

 王家の人達ならあの転生者、それに世界の秘密だって知っているかもしれない。


 日が経つにつれて複雑になっていく疑問。

 

 王子を狙う暗殺組織:パレード

 不穏な動きが目立つ3年前の転生者。

 ルイスさんのいう最強の魔法派。

 赤ん坊を運ぶ天使の謎。

 なぜ女性がいないのか。


 頭がパンクしそうだ。


 だが……このままこの謎を無視することも俺には出来ない。

 一体この国……この世界で何が起きてるのか。


 もしかしたら既に俺達はとんでもないことに巻き込まれているのかもしれない。


 そんな不安を胸に抱きながら俺は馬車へと乗り込んだ。

 

 

 

 



 




 


 


 


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