ウィルオウィスプの一日

kurono_くろの

ハッピー…

今年もこの日がやってきた。カブのランタンに火を灯す。蝋燭の柔らかなオレンジが、部屋の隅々に行き渡る。今日の夜が待ち遠しくて、今日の夜が楽しみすぎて、蝋燭を見ていたらもう、こんな時間。今日は特別な日だから、張り切らなくちゃ。急いで身支度を整える。今日は、緑。できる限り光が映える色じゃないとね。頭にも、布を被って、さあ行こう。

まずはこの沼を出て、近くの街に行こうかな。おっと、その前に。そこにいる旅人さんをランタンで導いてあげないと。へへ、今日はイタズラし放題!こっちの底なし沼に入れちゃおう!そうそう、こっち。そのまままっすぐ。よし、はまった!へへへ、他にはいないかな〜っと。探しながら街に行こう。

街に着くまでにもう2人。崖に落として、転ばせて。イタズラしちゃった、でも、まだまだ。これからだ。

街を見渡すと、まだ人がたくさん。でも、僕と同じ格好の子ばっかりだ。僕らの体は毒がある。もし間違えてたべたら大変だ。そうだった。ごちそうは子どもだけじゃないよね。家の扉をコンコンコン。出てきた人にこう言うんだ。「トリックオアトリート!」そうすればきまって美味しいお菓子が出てきて、僕はごちそうにありつけるんだ。そうと決まれば早速行こう。近くの家を、コンコンコン。「トリックオアトリート!」わあ、キャンディーだ!ありがとう!次の家でもコンコンコン。「トリックオアトリート!」わあ、こっちはクッキーだ!キャンディー、クッキー、チョコレート。お菓子がいっぱい、嬉しいな。もう一件、コンコンコン。…あれ?誰もでてこないな?じゃあもう一回。コンコンコン。あ、出てきた。「トリックオアトリート!」…え?もう、無いの?僕はお菓子が欲しいのに。遅い時間だから寝なさい?確かに夜に寝ない子はとっても悪い子だ。食べて、お仕置きしないとね。…それはそれとして僕は今トリックオアトリートって言った。お菓子が無いなら…イタズラだ!何をしよう?ここには崖も、沼も、岩場もないや。そうだなあ、そうだなあ。地下室の階段で転ばせよう。足が絡れて、ステンって。へへへ、きっと、面白いぞ。そうと決まれば、早速しよう。顔を見せれば、きっと驚く。ほら、この人、もう転んだ。でも、ここで転ばれたって意味がない。このままこいつを追いかけて、階段で足をすくってやろう。おもしろそう、おもしろそう!そうだ、そうだ。そうして走って逃げていけ。後もうちょっと、もうすぐ、もうすぐ。あった、階段。そっちに行って。そう、そっち。よし、今だ!すってんころりんどんがらがっしゃん、あははは!尻もちうって、後転ごろん。バランス崩してごろごろごろって。面白いけど、物足りないなぁ。

楽しんでたら、もう夜更け。でもまだお腹は空いたまま。このお菓子じゃあ、お腹は満たない。他にも食べて、いいものあるかな?あ、あったや、まだひとつ。悪い子だったら、食べていい。

悪い子は、いないかな?夜なのに寝ない悪い子は?もしいたら、どうしよう?頭から齧り付く?足から?腕からでもいいね!家に攫ってゆっくり食べてもいい!…うん?なにか、匂いが…これは、まだ起きてる子だ!すぐそこの家かな?窓から覗いてみよう!…あ。いた。起きてる悪い子だ。何をしているんだろう?ばらららら、どんどんどんって楽器みたい!家に入っちゃおう!こっそり後ろから近づいて、わ、って驚かすんだ。そしたら、頭からぱく、って食べる。こうやって、こっそり近づいて…

わっ!

ぎゃあ、だって。面白い。だけど、今はお腹が空いているんだ。じゃあ、いただきまーす!ぱくっ!うーん!血の味!ぐちゃって、柔らかい頭。美味しい。そのまま体も、腕も、足も、美味しく食べちゃった。もうちょっと、まだいるかな?街を歩き回ってみようっと!

うーん、いないかなぁ?…いや、この匂い…またいた、悪い子!向かいの家だ。この子は…薄くて小さいテレビで何か見てる。ベットで寝転がるなら、そのまま寝ればいいのに。この子は…足から食べちゃおう!僕にも気付いてくれないし。このまま食べよう。じゃあ、いただきまーす!ぱくっ。ぎゃっ、って。もがいてる。そんなに動かしても足はもう無いのに。そのまま体。腕、頭!ちょっとうるさかったけど、美味しかった!

…ふぅ。いっぱい食べた。もう僕も、お腹がいっぱい。でも、久しぶりにこんなにいっぱい食べれたね!本当にこの日は大好き!この世の誰よりも、心をこめて。

ハッピーハロウィン!

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