急に召喚されたので賢者として魔王に助言することになった

神奈いです

急に召喚されたので賢者として魔王に助言することになった

----異世界に召喚されました----




「で、俺は魔王アンタに助言すればいいのか?」


「ああ、そうだ。我々も何度も戦いを挑んでいるのだが、毎回いいところで魔王が倒される。これは何かやり方に問題があるのかと思って異世界の知恵を借りようとしたのだ」




黒いローブに身を包んだ魔王が答える。鋭い目に青白い肌。巨大なヤギの角を頭にはやしていかにも魔王だ。






「それは賢明だな、この俺がイノヴェーティブなソリューションをオファーしてブレイクスルーを共同クリエートしよう」




「……済まない、翻訳魔法が上手くいってないようだ」


「……とりあえず現状を教えてくれ」






 - - - - -






「まずだな、なんで歴代魔王は勇者が十分にレベルアップして魔王城まで攻め込んでくるのを待ってるんだ?弱いうちに殺せばいいじゃないか」




「む、しかし魔王が気軽に出歩いては威厳というものがだな?」




「威厳を守って戦って負けてどうするんだよ、おらいけ」




「分かった……」






魔王はちょっと困ったように言うと、手を巨大な水晶玉にかざした。




魔王の間に置かれた水晶玉は魔力を注ぎ込まれると、何百という人間の顔を表面に映し出す。






「えっと、誰から殺せばいい?」


「……は?いや、伝説の勇者だよ、伝説の。一人しかいないだろ」




「いや?伝説の勇者候補はたくさんいるぞ?人間は無駄に数ばかり多いからな」




「……一番レベルの高いやつから殺せばいいんじゃないか?」


「さすがに異世界の賢者だな!」






そして魔王は各地で勇者を殺し始めた。




しかし、何人も殺すうちに行動パターンを読まれたのか、ある日、単独行動中の魔王が世界中の国や神殿から派遣された勇者と聖女200人による神聖封印陣を発動。




----世界は平和になった----




















----リセット----














 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □




















----異世界に召喚されました----






「で、助言を頼む」


ヤギ角の魔王が語りかけてきた。






「いや、単独行動するなよ?!なんか四天王とか魔王軍幹部いねーの?!」


「四天王はいるが……単独行動とは何のことだ……?」






ぐっ、なんか二回目な気がするというか、俺ループしてるぞ?!






「いいか、勇者を殺して回るんだ。で、その時はきちんと四天王とか魔王軍最強の部下を護衛につれていけ、神聖封印陣には気をつけろよ!!!」


「おお、先手を打つのだな!で、たくさんいるんだが」


「レベル順にやれ!」






そして魔王と四天王は各地で勇者を殺し始めた。勇者たちも集団で立ち向かったが、最高幹部勢ぞろいのパワーにより魔王を守り切る。




そして四天王の邪教神官が人間側が隠していた神聖封印陣を見抜いたことで勝利が確定した。








「……メチャクチャ時間かかるな」


「だから勇者が多いうえに逃げ回ってるからな。こちらは全員で出陣して一日にやっと1人か2人では十年ぐらいかかるぞ。手分けするとかしていいか?」


「だめだ、手薄になったらヤバイ」




「わかった、続けよう」








そうして、1年がたったころ。




とある勇者パーティが四天王不在のダンジョンから伝説の武具を盗み出し、完全体になった勇者により魔王幹部が全員討伐された。








----世界は平和になった----




















----リセット----














 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □




















----異世界に召喚されました----








「で、助言を頼む」


ヤギ角の魔王が語りかけてきた。




「いやいやいや、なんで伝説の武器とか魔王軍が隠し持ってんだよ!!!」


「む?それは勇者に取られるとまずいから四天王がそれぞれ剣、鎧、盾、兜をだな」




「後生大事にもってんじゃねーよ!破壊しろ!」


「ははは、愚かだな異世界の賢者よ。我らを滅ぼせるような強力な武器だぞ。完全に不利属性なんだ、破壊できるわけがない!!!」




「どこか絶対に取りにいけないところに投げ捨てれば!」


「それは過去の魔王がやったな。しかし勇者は毒沼の中だろうと、マグマの中だろうと、なぜか見つけるんだ。なんか波長が合うんだろうな」








「わかったわかった。じゃあ魔王は魔王城に居ろ、狙われて危ないからな。四天王はダンジョンで伝説の武具を守っておけ、取られると負けるからな」


「それはいいが、どうやって世界征服すればいいのだ?」






「いや、魔王軍なんだからモンスターがたくさんいるだろ。それにやらせればいいんじゃないか?」


「幹部がこもってモンスターが暴れるのでは今と変わらんぞ」




それもそうか。




「モンスターがバラバラに暴れるんじゃなくて、軍隊を作って攻めるんだよ」「おお、賢いな異世界の賢者よ」








さっそく魔王は六魔将を任命、魔鳥軍、魔龍軍、魔獣軍、魔鬼軍、魔霊軍、魔術軍などの魔物軍を作って、人間の国に攻め込ませた。






各軍はバラバラに人間の国で戦い、ある程度の戦果を挙げた。




しかし人間は魔物軍の属性を調査、魔鳥軍に弓兵、魔獣軍に混乱魔法、魔鬼軍に属性魔法、魔霊軍に浄化魔法、魔術軍に魔法無効化などをぶつけ、人間軍が有利に立つ。




さすがに魔龍軍は強く、各地の戦いを支えたが、兵力が少ないため手が回らずに包囲されて敗退した。






 - - - - -






「いや、なんでバラバラに攻めるんだよ。まとまれよ。前衛ばかりとか後衛ばかり、あと魔法も火ばかりとか氷ばかりじゃ対策されるだろ。混ぜろ混ぜろ」


「む、わかった」






六魔混成軍団と人間軍の決戦が始まった。






そして。






「ヒトカゲと雪女がぶつかって消えたぞー!」


「ちょ……オークがあたしたちダークエルフを狙っててキモチわるい!」


「ゾンビの毒で病気に……」


「ゴブリンどもが俺のカネを盗んだ!!殺す!!」


「ええい、うるさくて魔法が使えんわ!獣どもを黙らせろ!!」






混成軍団は壊滅。






そして、四天王のダンジョンが一つずつ攻略されて、伝説の武器を集めた勇者により魔王は討伐された。










----世界は平和になった----




















----リセット----














 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □




















----異世界に召喚されました----








「で、助言を頼む」


ヤギ角の魔王が語りかけてきた。








「俺が悪かった。この世界をバカにしていた」


「おや?どうしたのだ異世界の賢者よ」






「人間だってそれは必死だよな。だから脅威が明確ならそりゃあ団結する。だが……人間どもはいくつもの国に分かれてるんだよな?」


「そうだが、どうするのだ?」






「まず、魔王は世界征服をあきらめろ。世界征服させてやる」


「は?」








 - - - - -






世界に激震が走った。




新しい魔王が病死!!!




魔族たちは魔王領に集まって次の魔王選出のための武術トーナメントの準備を始め、モンスターたちは影を潜めて人を襲わなくなった。








世界は平和に……ならなかった。




各地の国王たちは勇者への支援を打ち切った。


各国は平和を謳歌し、贅沢をはじめ。




そして些細なことで戦争を始めた。






勝ったり負けたりしていたが、次第にいくつかの国が軍事力を大幅に増強し、列強と呼ばれる大国になっていった……










「よし、帝国と騎士国と商業国のトップと契約完了したぞ!!軍事支援する代わりに生贄をささげ、魔王と秘密同盟をすることになった!実質的に属国だ!」


「おお!人間の国がこんなに簡単に属国にできるとは!被害も少なく生贄も得られる」






「いやぁ、長かったな……下っ端から少しずつ洗脳して、そいつらを出世させて、皇帝や国王の周りに浸透させて……」


「これで、最後の戦いに勝てば、我による世界征服完了だな!」


「ああ、人間どもに契約を理解させるためにも魔王軍を動員して圧勝してやろうぜ!!」






そして、魔王軍は属国の人間兵を従えて最後の戦いに赴き。


世界を統一した!!














魔王のもとで世界は邪悪に支配されました。
























----終わり----


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