聖母のような妻

高黄森哉


 私の幼馴染の妻は、純真さを生まれながらにして持っていました。人を決して疑うことはしなかったし、彼女の博愛主義は行き過ぎてるほどです。キッチンにたつ彼女は私の全てを赦してくれた。まるで聖母、いや聖母そのものといっても過言ではありません。

 生まれも病院から同じな私たちは、二十五で結婚してから円満な日々を送っていました。その妻の上の名は、阿部でありました。幼いころは、よく阿部マリアと渾名されて、いじめられていたものです。私は、どんな時もいじめに立ち向かっていったし、決して見捨てることもなかった。これからもそうだと神様に誓えます。それは、確信に似た決意でした。


 しかし、そんな幸せの結婚生活は長く続きませんでした。


 今までプラトニックな関係を築いてきたのにもかかわらず、妻の腹は栄養失調児のように膨らんで、臨月になりました。怒り、そして悲しみ。感情がくしゃくしゃになって頂点に達したある朝、私は遂に妻を難詰してしまう。


「誰としたんだ?」


 すると妻は静かに泣き始め、そして私の顔をじっと見つめるのです。


「してません、私は、潔白です」

「では、潔白を証明して見せろ」


 すると妻は私の手を掴み、股間に引き入れた。私の指は入口を突破したところで、処女膜に突き当たる。私は己の猜疑心を恥じました。


 ……………… そうです、妻は処女懐胎をしたのです。

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聖母のような妻 高黄森哉 @kamikawa2001

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