四限目 文化祭!!

明日あす」と書かれた日記を中田の前に置いた。

「読んでくれ、話はそれからだ」

彼女は視線を日記に下ろしページの真ん中辺り、彼女、彼が付き合った

12月付近のページ。

しばらく見ていると彼女は表情をやわらげたり、時折笑いをこぼし、日記を読み終わる頃にはひとみからは涙が一滴、流れていた。

「これが真実だ。知らなかったとはいえ、あんな態度をとってしまって

悪かった」

「いえ、私こそ……わがままで身勝手だったわ」

春音はのんのことは」

「知っているわ、あなた…いえはじめに聞いたもの。

もういいかしら?これで私はおいとまさせてもらいたいのだけれど」

彼女には言わない、ずっと頬が緩んでいたことなんて。

これで依頼は無かったことになるだろう。

「はぁ〜!終わったぁー」

机に突っ伏しながら俺に話しかけてくる。

「これで後悔はなくなった。いつでも戻れるよ。

ありがとうな、北」

「まだだよ。誰が君に風紀委員に命じたと思ってるの」

「そういえば…だれなんだ?」

「僕だよ」

まぁ驚きはない。だって風紀委員俺を除くと一人だけだから。

「そっか。それでなんで俺を風紀委員にしたんだ?」

「それはもちろん!僕の依頼を聞いてもらうためだよ」

「もちろんって…けど借りもある。内容を聞こう」

机から乗り出し、話を促す。北も同じように身を乗り出す。

「それはね〜…」

ガラッいきなりドアが開いた。俺と北は二人して同じ方向を向く。

「おい!依頼がある。聞いてくれって…お前らそんな関係だったのか!?」

斎藤がノックもなしに入ってきた。それになんだ?

関係?あ、そうか。この体勢は俺たちが、、、

「そ、そんなわけねぇだろ?それで何だよ斎藤」

「本当か?あ!そんなことよりここ依頼を頼めるんだろ?

なら俺とその…愛歌との……」

「却下」

「え?」

「却下って言ったの。それは僕たちにはできないし」

「北?なんか怒ってる?」

「そこをなんとか!!」

「僕は言ったよね。今ついさっき。

人に頼る前に鏡で自分の顔と性格を見直してきたら?」

「グッ!?わかったよ。もう頼らねぇ」

斎藤は出ていった。斎藤には悪いが味方はできそうになかった。

「…僕、文化祭の準備してくる」

少しの沈黙の後、北も外へ出ていった。

「帰るか」

文化祭の準備も一度もせず、明日!文化祭が始まる。

「おはよー」クラスTシャツを着たクラスメイトが続々現れる。

クラスTシャツがないとクラスメイトかさえわからない俺にとっては

ラッキーだ。

「やっほ~。ってあれ?二ノ宮くんTシャツは?」

北だ。こいつ分かって言っていることに腹が立つ。

「はいはい。ないんですよ。協力なんてしてませんから」

「へ〜ないんだ〜」

口元に手を当ててニヤッと笑う。

イラっ!

「頑張ってくれよ、俺も様子を一度ぐらい見に行くから」

下手なニヤケ顔で言い返し、教室を出ようとする。

前に進めない、どうやら手を掴まれた。

「まって…今日、、あの…」

「なんだ?まだいじり足りないってか?」

「僕と一緒に回ってくれなぃ…?」

最後の方は何も聞こえなかったけど言いたいことは分かった。

何考えてるか分からないが、借りもあることだし。

「おう…よろしく頼む」

こうして一緒に回ることが決まったのだが、北はどうやら店番があるということで俺も手伝うことになった。

「はぁ〜!終わったぁ」

ひたすら、焼きそばの焼き作業をさせられクタクタだ。

「はい!これ差し入れ」

そこには俺が作った焼きそばが包装されていた。

手渡しでもらい早速食べ始める。

「ちょっと僕座れないから、横に寄ってよ」

「ん。」

少し横により座るのを促す。

「これ食べたらどこ回る?僕お化け屋敷行きたいな〜」

「北が回りたいところでいいぞ。俺は行きたいところなんてないから」

「そんな投げやりだから、だめなんだよ!」

「直していくよ、これから」

「うん」

その後、俺と北は、お化け屋敷、上映会、吹奏楽部、軽音楽部などなどの演目を見終わり。

三時頃。北が最後に行きたい、名前は『花束を君に』が行われるグラウンドに来ていた。

「さぁ最後の目玉プログラム!『花束を君に』がやってまいりました!」

中央のステージにいる進行役が声を上げる。

「まずは一人目、声上げろ!」

声が上がった。声の主はステージに上がる。

ステージに上がったのは俺たちに依頼をした他クラスの女生徒だった。

進行役は彼女に花束とマイクを渡す。

「斉藤君!いませんか!」

観客はざわつきながら斎藤を探し始めた。

斎藤は直ぐにステージに上げられる。

「斉藤君!好きです!私と付き合ってください!」

言った。彼女の気持ちは本当だったのだ。

だけど…

誰も物音一つ立てないしばらくの沈黙

「ごめんなさい」

斎藤は頭を下げ、丁寧に断った。

失意の声の観客、女生徒はステージの裏にはけられた。

「残念でした!では斎藤さん次はあなたです!」

そうか!決まらなかったらいつまでも続くのか。

斎藤が告白する相手なんて、一人しかいない…

斎藤に花束とマイクが渡せれる。

「中田 愛歌さん、いませんか」

いつものごとく上げられる。

「ずっと前からあなたのことが好きでした!付き合ってください!」

「嫌です」

うわっ、、オブラートに包めよ。斎藤…大丈夫かなぁ。

案の定、斎藤は死んだように倒れ裏に運ばれた。

その後進行役は中田に誰を呼ぶか促す。

「二ノ宮くん」

え?俺?頭の中が真っ白になった。

観客に見つかってしまい運ばれ始める。

それと同時に少し強い力で掴まれる。北だ。

「ちょっと待った!!僕も二ノ宮くんに用がある」

「おおっと!これは面白いことになった!言わば

ダブルブッキング状態だぁ!」

若干面白いな、そのワードチョイス。

俺、北、中田の3人がステージ上に立つと、二人分の花束とマイクが渡された。

「では、まず!中田さんお願いします!」

はじめ…いえ二ノ宮くん。これまであなたを彼と重ねて見ていた。そしてどこかで早く記憶が戻ってほしいそう思っていたわ。その時の私はあなたのことを見ていなかった。ごめんなさい」

俺は首を振る。

「気にしてない。と言ったら嘘になるが、今は俺を見てくれているんだろ?ならいいよ」

「だから、私と…」

観客が黙り込む。俺も息を呑み、見守る。

「友達になってください!」

彼女は赤面しながら俺に顔を向ける。

「ククッ…ハハッ」

それもそうだ。何を期待しているんだよ!俺が一度振っているんだから。

「もちろん」

「え!?じゃあ…次に北さんお願いします!」

「二ノ宮くん、僕の依頼、まだ言ってなかったよね?」

「ああ。聞いてなかったな」

「実は、君の、いや君たち二人の問題を一緒に解決策を探そう。それが解決したら君の好きなようにしたらいいと言おうとしていたんだけど。違ったよ」

北は一歩近づいてくる。

「さっき、愛歌ちゃんが君を呼んだとき、僕、こう思ったんだ。

 行かないで、ってね」

あぁそうか。だからさっき掴んでしまったのだ。北は。俺には痛いほど分かる。目の前からかけがえのない人がいなくなってしまうことを。


「だから私は欲張らない。君がいなくならなければそれでいい。

おねがい。僕をまた一人にしないで、寂しいのはもう嫌なんだ」

らしくなかった。北らしくない曖昧あいまいな問い。

それに答えられるほど俺はまだ北を知ってはいない。

差し出された花束を受け取る。北は顔を上げ、俺と目が合う。

まだだ。まだこれでは終わらせない。

「違う」

そこにいた全員が静まり返る。

「助け合いだ。俺は一人にしない、だから北、俺の答えを聞いてくれ」

「うん」

「好きだ。俺はお前のことが好きなんだ。…だからその俺と付き合ってください!」

花束をもう一度北に差し出す。

「うん!もちろん!」

北は花束を受け取ってくれた。こうして文化祭は幕を閉じた。



帰り道、俺は北と歩いている。


「僕嬉しかったよ!二ノ宮くんに告白してもらって!」


「そうか良かったよ。喜んでもらって。僕もすごい楽しかった」


「え?僕?もしかして僕の真似してる?」


「今俺そんなこと言ってたのか?聞き間違いだろ」


「そっか〜ならいいんだけど」



あぁ。良かった。本当に良かったよ。






















































































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答えは問いがないと出てこない 水てっぽう @santori

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