予想外の訪問者2 (sideサリウス)

時間がかかってしまいましたすみません!

リオの苗字を変更したので今までの話で少し内容が変わっているところがあります。

世襲制のように免許皆伝したらアマテラスの苗字を貰うという描写をゴリゴリ書き忘れました!

申し訳ございませんm(_ _)m





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予想外の出来事に少しの間動けないでいると席に座っていた大男、バックス・トーロがおもむろに立ち上がり、ギルドの入口にいる鬼人と子龍に向かって魔力を放ちながらゆっくりと近づいて行った。


バッカスとは帝国出身のSランク冒険者であり

傲壊ごうかい”の二つ名で知られる大男である。

気の強いSランク冒険者の中でも一際我の強い人物として有名であり、その気性の荒さ故に何度も問題を起こしてきている冒険者きっての問題児である。

その反面、世界一の戦斧使いとして名高いこの男は地魔法を最終進化させた砕星魔法さいせいまほうと達人という言葉では言い表せないほど優れた斧術を操り数多くの強大な魔物を討ち取ってきた。

その功績は今までの悪評を補って余りあるほどであり、正真正銘Sランクの名に相応しいこの世の圧倒的猛者なのである。


そんな男が鬼人に向かって、有り余る魔力を放出させながら凄む。


「おいガキ。今は会議中だ。邪魔すん──っ?!」


急いでバックスを抑えようと立ち上がったその時、突然バックスが立ち止まる。

あのバックスが止まる?

自分より実力が上であると認めた者の言うことしか聞かないあの暴牛のような男が?

一体何が起きた?

一向に動こうとしないバッカスを尻目に奥で佇む鬼人によく目を凝らす。


次の瞬間、目の前に巨大なが現れた。


なんだあれは…?!

一見、普通の鬼人にしか見えないその男は巨大な竜巻に見間違うほどの莫大な魔力をその身に宿し、神がかった魔力操作でその一切を体の内にとどめていた。

鬼人は突然立ち止まったバックスを不思議そうに眺める。


「ん?すまない。会議中だったのか。また出直すことにするよ。」


そう言い軽く頭を下げ、子龍を連れて立ち去ろうとする。


「おいおいおい…嘘だろ。お前、名前はなんて言うんだ?」


帰ろうとしていた鬼人にバッカスが鼻息を荒くしながら問う。


「…俺だよな?リオ・アマテラスだ。」


鬼人は狂気的な表情をしているバックスをかなり気味悪そうに眺めながらそう答え、関わりたくなさそうに足を少し引く。

そのまま帰ろうとしたその瞬間、


「リオか…良い…良いぞお前!!もう我慢できねぇ!!」


気が狂ったように目を血走らせ口元に笑みを浮かべたバックスが背中から神速で戦斧を取り出し下から切り上げる。

鬼人は動かぬまま迫り来る斧をじっと見つめる。

当たるかと思われたその瞬間、突然腰を低く落とした鬼人が一瞬で風の魔力を左手に纏わせ斧の側面を軽く叩く。

途端に風の魔力が暴風と化しバックスの戦斧を大きく弾いた。


「なにっ?!」


一瞬の驚愕の後、バックスは身体を後方にひねりながら大きく退く。


「っくっくっくっく…思った以上の傑物だな。よし!お前今日から俺の友達ダチな!バックスと呼べ!」


「…は?いやだわ!!急に切りつけてくるやつと友達になんかなれるか!」


「なんだよつれねぇなぁ。もっとこいつで語り合わなきゃダメか?」


「…友達になるかは別だけどもうちょっとやり合うのは拒否しない。勝手にかかってこい。でもあくまでお前が勝手に襲ってきたっていう体だからな!」


予想外の返答だったのか目を丸くしたバックスは嬉しそうに顔を綻ばせ豪快に笑った。


「余計気に入ったぞリオ!!お前みたいなやつに手加減は無粋だな!特別に俺の”とっておき”を見せてやる!」


そう言いながら戦斧を曲芸のように回していたバックスは斧に大量の魔力を込め、上へと投げた。


「…急に何してんのおっさん?負けって認めた?」


「ほざけ。俺はちまちま探り合うのが好きじゃねぇんだ。おいリオ、こいつはかなり重いぞ?」


「…確かに今までのとは違うな。くそ!おっさん相手に初披露かよ…」


上へと投げられた斧をどこか嬉しそうな様子で見ながらそう呟いた鬼人は、抜刀術の構えをとり静かに目を閉じる。

対するバックスは足を大きく開き、体を極限までひねった状態で停止させた。

両者の間に凪いだような静寂が訪れる。

数秒が何分にも感じられるその静寂は突然上から降ってきた物により終わりを告げられた。

いつの間にか超質量、超硬度のミスリル魔鉱石を纏っていた戦斧が、上からとんでもない速度でバックスの掲げられた手に吸い込まれていく。

バックスは落下してきた斧を掴み、あらん限りの力で思い切り鬼人に投げつけた。


「引き潰せ。”地王の断罪テルズ・ディオミス”!!!」


落下の勢いとバックスの怪力によって音速にまで達した戦斧が鬼人を喰らおうと牙を剥く。

それを見た鬼人は怯える訳でもなくただただ不敵な笑みを浮かべ刀に薄く風の魔力を纏わせた。


「天神流 守の型──」


「っやはり!!」


天神流だと?!

発された言葉に驚く暇もなく斧は鬼人に迫る。

そして戦斧が刀の間合いに入った。

その瞬間、固く閉されたままだった目が開き戦斧を捉える。


「──”流羽”。」


いつの間にか抜刀した刀で目の前まで迫っていた戦斧を下から切り上げる。

刀が当たると思われたその瞬間、突如微弱だった風の魔力が暴風と化し一気に戦斧の勢いを上へと流した。

上へと勢いが流された戦斧はギルドの壁を突き破り飛んで行った。


なんという技術だ…


ギルド内の全員が彼の技術に戦慄し、興奮を覚える。

あの超速の戦斧に刀を合わせ側面に当てる。

この事だけでも世界で同じ芸当が出来るのは極々僅かであろう。しかしそれだけにとどまらずそこから一瞬で風の魔力を強め、完璧な魔力操作により制御された暴風を刀の切り上げと同時に上へ解放させ勢いを流す。

まさに戦斧が”風に流れる羽”のように軽々と飛んで行き、その見たことも無い技術にバックスも満足したのか大笑いしながら鬼人の背中を叩いていた。


「ガッハッハッハ!大したタマだな!!おめぇ天神の使い手なのか?とんだこと言ってやがるが俺は信じるぜ!それより動いたら腹減っただろ?俺が飯奢ってやるから着いてこい!来い。”ガイア”」


「うお!キャプテン・アメリカかよ…え、じゃあ俺の冒険者登録は?夢への第一歩は?おい!おっさん手引っ張るな!ご飯ありがたいけどちょっと待て!ちょっ!力つよっ!あんたアレ本気じゃなかっただろ!?」


さっきまで真剣に闘り合っていたはずの二人がいつの間にかギルドから出ていこうとしており、先程との変わりように職員も訳が分からずにバックスを止めることが出来ずにいる。

まあ色々対処していると他のSランク冒険者の貴重な時間を奪ってしまいそうなのでうるさいのが一人居なくなったと思って会議を進める事にしよう。

天神流なんて言葉も聞こえたが今は聞こえないふりをしよう。冒険者登録に来た時に聞けば良い。

そう決心し会議を再開しようとしたその時、


「そこの御仁!!少し話を聞かせて頂きたい!」


必死の叫びがギルドに響き渡る。

…まあそうなるか。

声のした方を向くとそこには案の定見たことないほど取り乱したアオイとアキオミがいた。


「単刀直入に聞かせていただく!その技、その魔力、そしてその刀、あなたは…あなたは天神流の継承者なのだろうか?!」


そう聞かれた鬼人は手を無理やり引くバックスの頭を叩き足を止めさせ、こちらに振り向いた。


「ええ。俺が六代目天神流継承者。リオ・アマテラスです。」


ありえない事を言っている。

しかしどこかそれを確信させてくるこの鬼人に私は目を離せないでいた。








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ちなみにサリウスさんがこの戦闘をここまで余裕を持って目で追えてるのは自身が強いのもありますが鷹王の二つ名にちなんだ眼の技能スキルを持っているからなんです!

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天雷の超越者〜最強を目指した男の異世界英雄記 璃桜 @kou1104

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