予想外の訪問者(sideサリウス)

章のタイトルと内容を修正しました。

遅れてしまい申し訳ございませんm(_ _)m






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シセルギア帝国・帝都・冒険者ギルド本部 総括室





山のように積まれた書類に目をやり、思わずため息が漏れる。

今年で冒険者ギルド総括という立場になってから二十年という月日が経ち、段々と書類仕事が体に堪えるようになってきた。老いた体を1度休めようとすでに冷めている紅茶を口に含み背もたれに深く腰掛ける。

眼鏡を外し疲れた目頭を揉んでいるとノックが聞こえてきた。


「入れ。」


「失礼します。予定していたSランク冒険者の方々が全員揃われました。」


「了解した。すぐに向かう。」


すぐにイスから立ち上がり眼鏡と資料を抱え歩き出す。今日は一年に一度この冒険者ギルド本部に世界中からSランク冒険者が集い今後一年どう動いていくかや各々にこなしてもらいたい極秘依頼などを会議する特別な日である。

Sランク冒険者とは冒険者ランク最高位の者たちのことを指す。

冒険者ランクとはE~Sまでに分けられている冒険者の実力を示す指標のようなものであり

Cランクまでは才のない者が努力で辿り着ける領域とされている。

その上のBランクはベテラン、一流と言われる者達の領域であり秀才が努力を重ねることで手が届くランクであると言われている。

さらに上のAランクは達人、超一流と言われる者たちの領域であり人間が辿りつけると言われている最高到達点がこのランクであると言われる。

そしてSランクは全員が全員、怪物や人外と呼ばれる領域の者達でありこの世界でも屈指の強者たちのランクであると言われている。

そんなSランク冒険者ともなれば子供達の憧れや大人達の安心の象徴となり世界中から沢山の尊敬を集める。

なのでSランク冒険者が帝都に集まるこの日は毎年人が各地から集まりいつも以上に街が活気に満ち溢れる。


だが人々から英雄と慕われているSランク冒険者の実情はそんな綺麗なものではない。

手を取り合い世界を救うなんて崇高な事は誰も考えておらず全員が全員自分が最強だと信じてやまない傲慢を極めし者達の集まりなのである。

自分が最強なのだとこの世に示したい。

誰のどんな技よりも自分が磨いてきたもののほうが優れている。

それを証明したいがために強い魔物を狩る。

そうした行動は結果的に多くの人命や環境を守ってはいるが彼らにとってそれらはただの副産物であり真の目的ではない。

勿論例外もいるがSランク冒険者とはそういう生き物なのだ。


長い廊下を渡り会議場であるギルドロビーに向かい歩いていく。

今年は何も壊れずに会議が終わってくれればいいが…

そんな淡い期待をしていると突然誰かに見られている気配を感じる。急に立ち止まったことを後ろについて来ていた職員が不思議そうに眺める。


「いるんだろアレク。出てこい。」


そう言うとどこからともなくコウモリが集まりだし一人の男を形成していく。突然起きた不気味な現象に職員は小さな悲鳴をあげ固まってしまう。


「さっすがサリウス!”鷹王”の名は伊達じゃないねぇ!」


無垢な笑顔を浮かべながらそう言う男は名をアレク・ラミアといい、北の国出身のSランク冒険者である。その可愛らしい見た目とは裏腹に実際は永き時を生きた”真祖吸血鬼”であり種族魔法である血魔法と目にも止まらぬ巧みな双剣術で数々の修羅場を生き抜いてきた正真正銘の化け物である。

戦場での残虐性から”血鬼”という二つ名で呼ばれており数多くの冒険者から畏怖されている。


「やっぱ元Sランクとはいえ実力は落ちてないね!良かった良かった!…あれ?サリウスそんな老けてたっけ?」


ひとしきり満足そうに笑ったあと、心底不思議そうに顔をまじまじと見ながらそう言ってくる。


「やかましいわ!さっさと席に戻れ!もうはじめるぞ。」


「ほ〜い。」


呑気にそう返事をするとアレクは再び体をコウモリに変え消えていく。

アレクはあれでもまだ扱いやすいほうのSランク冒険者であり、あれよりも更に一癖も二癖も強いものがあの扉の先に待っている。

考えただけで気分が悪くなってきた。

ロビーの扉に手をかけ深呼吸をすると職員が心配そうに顔を覗き込んできた。


「大丈夫ですか?」


「ああ。大丈夫だ。危ないから後ろに下がっていなさい。」


困惑顔の職員が離れていくのを確認すると意を決して扉を開く。

次の瞬間開かれた扉から魔力の激流が放たれ体を突き抜けていく。

これだから大変なんだ…こいつらは。

自分が最強だと信じてやまない者達が1ヶ所に集まると何が起こるか。簡単なことである。

各々が心に抱く譲れないプライド同士がぶつかり合い、またたく間に世界有数の超危険地帯が出来上がってしまう。

現に今このギルドロビーは一般人が簡単にショック死してしまうほどの魔力で満たされており、部屋の隅に立っているはずの職員が顔を青くし地べたに座り込んでしまっている。

あれでもCランク相当の力はあるのだがな…


「全員魔力をしまえ。うちの職員が離職したらどうしてくれる。」


そう言うと全員が魔力の放出を抑え、倒れていた職員が運んでいかれた。この部屋の魔力制御装置が壊れる前に早く終わらせるとしよう。


「それでは会議を始める。まず一番重大な原初の森の問題から話していくことにしよう。全員事情は聞いていると思うが再度確認していく。

今日からおよそ三ヶ月前、突如大陸中に五つの咆哮が響き渡った。多くの人間が恐慌状態におちいり一時経済活動停止など多大な被害を残したこの恐ろしい咆哮は原初の森に君臨していた”十王”の内五体の仕業であったことが後に判明した。

突然気が狂ったように暴れだし配下を連れ近くの十王の領域へと侵略した五体は三日三晩、王同士で激闘を繰り広げた末討ち取られた。その結果生き残った五体は進化してしまいただでさえ手の付けられなかった化け物がさらに強大な魔物に成長してしまった。王の進化に共鳴し、こぞって配下達も進化したおかげで今まではB~A級の冒険者でもパーティーを組めば何とか活動出来ていた森がAランク冒険者のみで組んだパーティーがギリギリ生き残れるような超危険地帯へと変貌した。正直、この任務はSランク冒険者であろうと困難を極めると思っている。それを承知の上で任務に参加してくれる者がいるなら挙手して欲しい。」


そう言うと少しの沈黙の後二人の男が手を挙げた。


「その任務、俺とアキオミに任せてくれないか?」


「ほう。あの”蒼龍”と”緋虎”が付いてくれるというならこちらも安心できる。」


「おう!俺らに任せときな!!ワクワクするな〜アオイ!」


「…一応言っとくがサリウス殿も言っていた通り今回は調査だからな?分かってるか?討伐じゃないぞ?」


「分かってる分かってる!!ガッハッハ〜!」


この大笑いしている大男。カグヤ・アキオミは、かの有名な大和大国出身であり大和大国でも超武闘派として有名な天捧武士団てんほうぶしだんの副団長をつとめる男だ。Sランク冒険者の中でも一目置かれるような実力の持ち主でありその雄々しい闘い方から”緋虎”の二つ名で呼ばれている。

そして最初に挙手した長髪の美形な男。イヒカ・アオイも同様に大和大国出身であり天捧武士団の副団長をつとめる男だ。こちらもSランク冒険者の中でも秀でた実力を持っており美しい太刀筋と龍の如き魔法から”蒼龍”という二つ名で呼ばれている。

Sランク冒険者の中でも最強格と名高いこの二人ならば何とかしてくれるだろう。


「他についてくれる者はいるか?知っての通り原初の森は広大な面積を誇っている。出来ればもう一人────」


会議を進めようとそう言いかけた時突然ギルドの扉が勢いよく開かれる。

何事かと思いそちらに目をやるとそこには、大和大国の伝統衣装のような服を身にまとい一目で業物だと分かる刀を腰にさげた鬼人と純白に輝く鱗に覆われた子龍が佇んでいた。

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