エピローグ


 呆然と歩く。


 そう、呆然と。


 だって、今。

 俺がどこにいるのかよく分からない。



 秋乃は先に帰ったらしい。

 俺を置いて。


 そう、俺を置いて。



 ウサギのぬいぐるみを背負ったままさまよい歩いて。

 どうやら、学校の最寄り駅に到着したようだ。


「おお、もう終電来ちゃいますよ、お客様」


 そんな俺に。

 ハスキーな声をかけて来たのは。


「萌歌さん……」

「ほら。これを受け取って頂かないと。高利貸しのあたしとしては商売あがったりです」


 そう言いながら差し出された封筒は。

 キャンセルを忘れていたライブの売上。


 百万円。


「す、すいません。それはですね……」

「あー。やっときたー」

「ん?」


 そんなところに近付いてきたのは。

 指輪商人、夢野さん。


「指輪代ー」

「あ、そうか……」


 そうだな。

 こっちはキャンセルできるようなものじゃないからな。


 右手で財布を取り出しながら。

 左手で受け取った領収書。


「……ん?」


 そこに書かれた金額は。


「はあああああああああああああああああああ!?」


 並ぶ丸がひのふのみ。

 えっとこれって。


「ほぼ原価なんだよー? 爆安ルビーの指輪、百万円ー」



 唖然としたまま指一つ動かせなくなった俺の目の前で。


 萌歌さんが、夢野さんに封筒を渡すと。


「毎度」

「あ、どうも……?」


 そのまま二人。

 改札を抜けてホームへ向かってしまった。




 膝から崩れた俺は。

 もちろん。




 終電を乗り過ごすことになったのだ。





 秋乃は立哉を笑わせたい 第16笑


 おわた




 なんとも大変な事態になった立哉!

 このまま復活できずに終わるのか!?


 次回、 秋乃は立哉を笑わせたい 第17笑


 文化祭振替休日を経て開始します!

 どうぞお楽しみに♪


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秋乃は立哉を眠らせたい? 第16笑 如月 仁成 @hitomi_aki

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