エピローグ こずえと梢
「あの事故を再現するって言っても、あの時着てた
「・・・・・・どうしよ?」
こずえは、そんなこと、すっかり忘れていた。
「まぁ再現するにも、そもそも同じ
「うん。この小説にも細かいところは描かれてないし、
「そうやな。うだうだ言うとっても仕方がないから、それでいこか[それでいこうか]。」
その日の夕方、梢の姿をしたこずえは、急いで、レディースチーム『大阪
空がすっかり暗くなり、再現まであともう少し、という時間になった。
「梢は怖くない?」
こずえは、ビビっているのは自分だけなのではないかと不安になった。
「まぁ、ちょっとだけ。」
「強いんやな。・・・・・・私なんか、さっきまでメチャクチャやる気やってんけど[やる気があったのに]、いざとなったら怖くて足まで振るえてきたわ。」
「大丈夫や! こずえはなんも考えんと、ウチを
梢は、
「そんな軽い気持ちになられへん! だって、私が・・・・・・梢を殺してしまうかもしれへんねんで!! そんなん嫌や!」
辺りを行き交う人など気にしていない様子で、こずえは、涙ながらに
梢の
しかし、梢はそんなバカな少女ではなかった。
「大丈夫や! 絶対に、絶っっ対に死なん! 神さえもウチを殺せん。だって、ウチは、レディースやで、『大阪 龍斬院』の梢やで、事故で死んだら、仲間に顔向けできんわ。だから安心しい。」
こずえの肩をしっかり
こずえの気持ちは痛いほどわかった。もし自分が、こずえの立場なら、絶対に同じ気持ちになっていた。だからこそ、今のこずえを励ませるのは、同じ
「・・・・・・ホンマに死なん? 信じるで。」
「ウチら友達やろ? 嘘なんかつかん[嘘なんかつかない]! 信じ!」
「・・・・・・それにしても、なんか、自分に言われてるようで、変な気分やわ。」
「ウチも。自分が泣いてるわけちゃうのに、みんなに見られてる感じがして、恥ずかしいわ。」
こずえと梢は、最後になるかもしれない、このような、入れ替わった二人にしかできないやりとりをした。
そして、とうとう、事故の再現をする時間がやってきた。
二人には、辺りの人の声や足音、車の音などの雑音は一切聞こえなかった。
聞こえたのは、自分の心臓が痛いぐらい激しく波打つ音だけだった。
二人は大きく深呼吸をした。
梢の姿をしたこずえは、オートバイにエンジンを掛けてぶっ飛ばした。
こずえの姿をした梢は、そのオートバイの
─────******─────
目を覚ました二人は、真っ暗闇の中にいた。
二人は、一瞬、あの世にきてしまったと思ったが、すぐに違うとわかった。
体の下がフワフワしている。
二人は、傷だらけの痛む体を力いっぱい起こして、名前を呼んだ。
「梢!」
「こずえ!」
その友達の元気な声は、隣から聞こえてきた。
ベッドの横の、間仕切りカーテンを乱暴に開けた。
そこには、確かに、友達の姿があった。
「な! 死なんかったやろ!」
「うん。梢はタフな女やな。」
「そんなことより、ウチら・・・・・・。」
「・・・・・・うん。気付いた。」
体も、声も、感情も、何から何まで。
「「戻ってる!!」」
二人は体の痛さも忘れて、抱き合って、喜びを分かちあった。
─────*****─────
エピローグ
「こずえ、今日の放課後、どっかになんか食べにいかへん?」
「ごめん! 今日は用事があんねん。」
こずえは、クラスメイトのユミに謝った。
「あ! 彼氏でもできたな!?」
「そんなんちゃうよ。じゃあまた明日。」と、言って、教室を後にした。
「ごめん! ウチ今日は、早よ上がるわ。」
梢は、『大阪 龍斬院』の仲間に謝った。
「なんやねん! 今日は、喧嘩しに行こうと思ってたのに。恋人優先は良くないぞ!」
「ちゃうちゃう。それに、ウチがおらんでも勝てるって!」
梢は、新しく買ったオートバイに
「ごめん、待った?」
「いや、ウチも今来た所や。」
それを聞いて、こずえは安心した。
「ほら! 乗り!」
梢は、自慢の真っ赤なヘルメットを渡した。
こずえはそれを被って、梢のオートバイの後ろに跨った。
「飛ばすで!!」
「オッケー!!」
二人の乗ったオートバイは、
二人の少女は、今、それぞれの道を歩んでいる。だが、その道は以前のような
こずえと梢 気奇一星 @14e1218
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