第2話 続・マザコンとは云わせない


 こんな経緯を経て彼女から離れたが、日常的に顔は合わすし会話も交わした。

 別れてなんかいない様に互い振舞ってた。


 でもそこに甘ったるさは無く、先々を照らしていたともしびみたいなものは、コレっぽっちも感じさせない会話だった。



 その中で何度か君は、一番になれなかった、と言ったね。


 そんなに一番が良かったのか?


 一番は永遠に一番とは限らない。 そんなものが良いの?


 それにだよ。 一番では無いと、自分は君に言ったかい?



 受験は上手くいかず、一年浪人するも想定外の所で手を打つこととなる。

 彼女は予備校の下見に同行してくれたし、大学に通う為の下宿街の物色もついて来てくれた。


 其れはまだ好きでいるからの行動かと考えたが、彼女曰く、“ 女は恋愛を上書き保存する ” のだそうで、既に自分とは別の誰か。 とやらと恋しているらしかった。



 

彼女の卒業式典の後、と或る送別会に同席し、駅までの道を肩を並べて歩き、同じホームで二人きりで電車を待つ間。

 よく行った場所、二人が好きだった作家のその後、初キッスのときの事、知人が彼女を好きだと言ってたこと。 その他諸々の話題を取り留めなく話をしたのが、二人が交わす最後の会話に為った。


 乗る電車が違えていて、彼女が乗った急行が先に発って、余韻も去った。

 くちにすると本当に淋しくなりそうで、別れの挨拶は無かったと記憶している。



 出逢って恋して愛して別離わかれて、そして君は――元気で幸せでいるか?


 “ いつの間にか君も 大きな窓を開けて 大きな空を目指す人になった


 飛び立とうとしても 飛び立つすべを知らない 僕に翼を見せつけながら


 あの 向こうには きっと 素晴らしい夢があると 大きな瞳を うるませながら ”


 いつか贈ったこの一節を、君は覚えているか__




 自分はあのとき彼女を一番、愛した。

 彼女のことを今も、と問われたら……どう答えよう。


 今以て自分の理想像は、変わることが無い。

 でも、一番好きとか一番大切とかの対象は、その時々で変わるものみたいだ。


 それにね。


 何くれと無く初めてを味わうとき、横に居たのは彼女であったし、自分の初めてのひとは彼女だけな訳で。


 そういう所以ゆえんで、君は永遠にオンリーワンなのかも知れない――




 自分の理想の女性は、昔から吉〇〇百合さんだ。

 何故と問われれば、言ってしまおう。 そう、母のイメージがそこに在るからだ。


 だからと言って “ 貴方はマザコンだ ” と決めつけて良いのものか?

 違う。 自分は至って常人、と誓って言う。




 マザコンとは云わせない!



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マザコンとは云わせない ももいろ珊瑚 @chanpai

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