第321話 中辻 2
「君達には残酷なことのように聞こえるかもしれないが、オロシの餌食にされるものは、決して無駄に命を終えているわけではない。オロシは彼らの中で特に大きな個体だけを襲う。小さくすばしっこい個体が選りすぐられ生き延びる事で、子孫にはより強くその特徴が受け継がれていくことができるし、それに・・・」
「身体が小さく力こそ強くはないが、実は彼らの妖力は低くはないんだ。彼らを喰らえばオロシの力は上がり、より強固な卵の守り手となってくれる。粗末になる命など一つもない。だから・・・」
「そんなに哀しそうな顔をしないで」と
「共にあらずとも、実を結ぶものはあるのだろうが・・・・・・」
意図せず口に出してしまったのだろう。
ふいに、
その細く高い真っ白な塔のある情景が頭をよぎったのは、刹那といえるほど儚い間のことであった。
だが、迫る情景はあまりにも鮮やかで、ヒヤリとするほど生々しい。
大切なことをどうしても思い出せず失ったままでいるようなもどかしい喪失感と、こめかみの鈍い痛みが、
「
さきほどまでの頭痛は跡形も残さず、まるで逃げるかのようにさっさと消え去ってしまった。
知らぬ間に、
頭の奥がぼんやりと霞み、何か触れそうであったものが勢いよく指のすきまをすり抜けていく虚しさに密かに襲われながら、
彼呼迷軌(ひよめき)~言霊が紡ぐ最期の願い~ utsuro @utsur0
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