第320話 中辻 1
なるほど。考えてみれば確かに
だが、
気づけば船は華辻の喧騒を離れ、巨大な建物へ向かい真っすぐ走っていた。
「まるで城だな」
巨大な地下の岸壁に半ば埋まるようにそびえたつ建物。
その静かな重厚感に圧倒されながら
城を囲う壁は先が見えないほど長く、中央には黒々とした大きな穴が口を開けている。
近くに寄ると、それは穴ではなくどうやら黒々とした巨大な門扉であることが分かった。
漆黒の扉は船が近づくと共にきしむ音一つ聴かせることなくゆるゆると開いていく。
壁の内側へ船を飲み込むと再び扉は口を閉じ、船は薄闇に包まれた。
そのすぐ前で、
「大丈夫。緊張しないで。・・・見て、凄くきれいだ」
言いながら
時折ぽつぽつと、光のいくつかが消えていく。
「オロシの連中に食われちゃってるね」
なるほど、だから光が消えるのか・・・と危うく聞き流してしまいそうになり、
振り返ると、同じように
わずかに眉を寄せ、
すかさずその変化にきづいた
「オロシは大きな獲物を好む連中なんだ。本来ならこんな小魚には見向きもしないが、これだけ集まれば目障りにも思うのだろうね。目につくものがいくらか餌食になるのは仕方がないことだよ」
「それなら集団でオロシにまとわりつくことないじゃないか。食われちゃうのにさ。・・・なぜそんな危険なことをするんだ」
「奴らも生きている。子孫を残したいと思うのは当然のことだ。それに、できるならば我が子に安全な場所をと望むのはいたって自然だろう。大物を好んで襲うオロシの船へ卵を託すことができれば、おいそれと子供が襲われることは無い」
「つまり、この船に卵を産みつけに来ているっていうこと?」
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