episode 8[死人に朽無し]
「死人さん!!」
炎の軍勢に対して単身突っ込んだ…、と言うよりもぼさっと突っ立っていたら飲み込まれちゃいました程度の勢いで、死人さんは炎の中に消えた。
「死ね、死ね死ね、死ね!火達磨になれ!!」
outllowのギルドはフィールド上での行動制限が無いようで、空間内ではそれぞれの所持金にプロフィール、オープンチャットから体力ゲージまで、色んなゲームの要素がごちゃ混ぜに表示されている。見づらいったらありゃしない。
その中、死人さんの体力ゲージに目をやると、緑色のゲージがみるみる内に減り、30あったHPが現在は8になってしまっている。眼を凝らすと、突っ立ったまま、炎の軍勢によるタコ殴りに遭っていた。
「だっさ!」
威勢の割に全然反撃出来ていない死人さんを目の当たりにして、ついつい本音が漏れた。
「っていうか体力少な…ひでぶっ!」
そんな私に向かって炎の中から急に焼石が飛んできて、私のHPは18/23になってしまった。死人さんの仕業らしい。女子とは思えない世紀末な悲鳴に加えて、私の方が体力が少ない事まで露呈してしまった。二重の恥である。
キレイさん(HP:47,200/47,200)に手を貸してもらい、私は真っ赤になった顔を伏せたまま起き上がった。違うもん…、石が当たって赤くなってるだけだもん…。
「まぁ、よく見てらっしゃい。面白くなるわよ」
そう言われて、炎に巻かれた死人さんに目をやる。すると体力バーは遂に1/30まで減っていた。くっ、しぶとい…!
「って、あれ…?」
灼熱の炎に晒され、炎の魑魅魍魎に切り裂かれ、噛みつかれ、殴打されている死人さんのHPは、1/30の状態から全く変化していない。
「人に死ねとか殺すとか、言うもんじゃない。仕返しに遭うぞ」
死人さんがシャッキーさんに対して、平然とした声でそう告げる。
「そもそも俺は死人。死人に口無し。転じて死人に朽無し。誰にも俺は殺せない」
「ぐ、う、うう、ぅるさい!!それでも、ウチは、殺す!!殺す殺す殺す!!ぶっ殺す!!」
そう叫んで炎の鎧を揺らめかせたジャッキーちゃんは、炎の軍勢達と一体化し、私達の頭上で巨大な火球となった。
「〝
膨大な熱量を放つ巨大な火球は、死人さんを含む私達目掛けて降りかかってくる。
「消し炭になれぇぇぇl!!」
怒りの炎で本人が消し炭になりそうな勢いのジャッキーちゃんに対して、死人さんはあくまでも冷めた視線を向け、
「〝
と、呟いた。
次の瞬間、
「ぎゃあああああああああ!!!!」
迫りくる火球の炎は勢いを失い、本当に消し炭になったジャッキーちゃんが、断末魔の叫びを上げながら地面に墜ちた。
「だから言ったろ…、〝死返し〟に遭うって」
ノーダメージだった筈のジャッキーちゃんのHPは、0/3,260になっていた。
outllow!! 44 @Ghostshishi
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