頼り目

シヨゥ

第1話

 他人に期待をするだけ損だ。そんなことはほんの数十年生きてきたぼくでも分かっている。

 ただ他人に頼るのが悪いっていう話じゃない。他人を信頼するなって話でもない。

 ひとりで出来ることなんて限界があるんだからガンガン頼るべきだ。だけど頼った結果なにが返ってきても文句をいってはいけない。だから期待をするなと言っているんだ。


 思い描いた結果を出してくれた時はかなり運がいいと思わなければいけない。これが大事だ。

 たとえ結果がダメダメでも、一生懸命がんばってくれたんだと思えば傷つきはしない。その過程であきらかに怠けている姿を見たとしてもだ。

 そんな時は「もしかしたら苦手なことを頼んでしまったのかもしれない」と自分を責めればいい。

 それでも足りないなら「もっと得意なことをお願いしてあげたらきっとストレスなくのびのびやってくれただろうに」と自分を責めればいい。

 なにが言いたいかというと、他人に頼るっていうのは責任を丸投げする行為だってこと。

 責任を放棄したのだから、どんな結果が返ってこよう文句は言えない。手放しでほめる以外の選択肢はありえない。

 その結果を悔やむなら丸投げする相手を選ぶ自分の「目」を鍛えるべきなんだ。


 とはいえぼくもその目を鍛えきれていない。

 目の前にうず高く積まれたガラクタの山がその証拠。

 今回の商品企画は大失敗である。ネットで見つけた工場に設計書を投げたのだが、返ってきたものが

なんか思っていたものと違う。

 それでもぼくが作るよりはマシだと思うんだけれども。

「仕方がない」

 これをどうにか捌かないと生活が成り立たない。だからいい感じに商品写真を取ってくれるカメラマンがほしい。ぼくはまた人に頼るのだ。

「期待しないで待ってるよ」

 そう独り言ちてオファーのメールを送るのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

頼り目 シヨゥ @Shiyoxu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る