第11話

 ベートルとの闘いは壮絶なものであった。わたしのグランドブレーカーをベートルが大剣で受け止めて。


 更に斬撃を繰り出してくる。グランドブレーカーは防御が弱いのでレナが助けてくれた。


「防御は任せなさい。アリサは攻撃だけに集中して」


 レナは剣で十字を描くと魔法の盾が現れる。わたしにはこんなに頼れる仲間がいる。絶対負けたりしない。


『炎殺の陣』


 ベートルは更なる炎を召喚する。厳しいがジルのマテリアルの力は負けていない。


『ヒートグランドブレーカー』


 わたしはベートルの黒い炎を叩き潰す。


「ば、バカな……」


 しだいに有利になる戦いはベートルを焦らせていく。そして、ヒートグランドブレーカーがベートルに直撃する。


「ふっ、骨が何本か折れたか……」


 ベートルの動きは止まり勝負ありであった。


「アリサ君、正義の鏡は持っているか」

「はい」

「その鏡でベートルの邪気を全て吸い込むのだ」


 ジルの言う通りに正義の鏡を掲げると。ベートルの邪気が吸われていく。


「完全な敗戦だ。殺せ」


 わたしがベートルの『殺せ』の言葉に戸惑っていると。ジルがナイフを取り出してベートルに近寄る。


「ジル!!!それでいいの?」

「あぁ……」


 ジルは言葉少なめであった。でも、決着をつける気であった。ナイフを持ってベートルに近づくと。ベートルは右手にエネルギーを貯め始める。


「止せ、これ以上、戦えば不老不死の秘術が解ける」


 ジルが警告すると。


「僕を殺すつもりなのだろ?」


……。


 ジルは沈黙している、いざという時に迷いが生じたらしい。


「つまらないね、僕は自ら命を断とうとしているのだよ」

「!!!……」


 ジルは慌てて間合いをとる。すると、ベートルはおもいっきり地面にエネルギーをぶつける。地面はひび割れて、それは洞窟の壁や天井に広がる。


「これは不味い、この洞窟が崩れるぞ」


 レナが叫び、慌てている。早く退避しなければ生き埋めだ。ベートルは血を吐き、苦しそうにしている。ジルの言った通り不老不死の秘術が解け始めているのだ。


「これが死なのか?マリア……ようやく君のところに行ける……」


 やがて、ベートルは嬉しそうになり。そして、体が透けてくる。


「我ら七人勇者はすでに肉体は滅びている。アルとレターの秘術でこの世界に留まることができているのだ。そのエネルギーを使いきってしまえば死だ」


 ジルはナイフを落としてかつての仲間の死を見守っていた。


「ジル、ここから出るぞ。邪気と一緒に死ぬのはごめんだ」


 わたしが大声で言いジルを連れ出す。




       ***




わたしはトーマトの街いた。あれから数ヶ月が経ち再び旅に出る支度をしている。マリー火山でジルと別れて一旦、トーマトに戻る事にしたのだ。ジルは再び旅に出ると言った。炎が使えなくなって大丈夫かと聞くと。


「俺には剣術がある。また、傷が増えたら見せてやるぞ」


 実にジルらしいが、別れは寂しいものであった。そうそう、勿論、オリハルコンの牙を探す許可は得られた。


 自室で窓の外から今日の天気を見ていると。


「アリサ、鍛冶屋ギルドの会長が来ていますよ」


 下からニーナの声が聞こえてくる。あのマッチョな人物か……。わたしは工房の玄関に向かうと鍛冶屋ギルドの会長がいたのである。


「AHHH、元気かね?」

「はぁ」

「要件は簡単だ、イスラの遺跡でオリハルコンの牙が見つかったとのことだ」

「ええええ……!!!」


 せっかく、旅の準備をしていたのに。わたしが落ち込んでいると鍛冶屋ギルドの会長は筋肉を引き締めて。


「ところが、イスラの遺跡はモンスターだらけなのだよ」

「ひょっとして、わたしが討伐ですか?」

「鋭いね、その通り、八番目の勇者の君に頼みたいのだ」


 ふう~


 やはり、イスラの遺跡まで旅をするのか。すると、レナが顔を見せる。どうやら、会長と一緒に来たのであった。


「お嬢さん、助っ人は必要かな?」

「おおよ!」


 わたしとレナは近づいてグータッチをする。流石、相棒だ。


 わたしとレナの旅が再び始まるのであった。


 そう、オリハルコンの牙の伝説はこれからだ。

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オリハルコンの牙 霜花 桔梗 @myosotis2

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