第10話

 わたしは心に信念を持ち、ピコピコハンマーを取り出してグランドブレーカーにする。


「話は終わりだ。決着をつけよう」

「えー僕はまだ喋りたい。戦いながら話そうか?」


 ベートルは余裕の表情で剣を抜く。そんなベートルを見てレナも抜刀する。これでジルが一緒に戦ってくれたら最高である。しかし、ジルは剣が抜けない様子であった。


「僕の大切なジルは見学だよ。鋼クモを放っておいた。この鋼クモの糸は鋼の様に固

く、それでいて細い、剣を抜けなくするには丁度いいのだよ」

「くっ、ベートル、やはり、手の内の分っている俺では勝てないか」


 悔しそうにするジルはわたしに小石を投げ渡す。


「これは?」

「炎のマテリアルだ、武器に付ければ自由に火を操ることができる」


 この炎のマテリアルはレナの魔法剣に近いらしい。レナも剣に炎をやどす。


「二人で火を扱えば威力が倍増よ」


 そんなわたし達を見てベートルは暗黒の炎を召喚する。


「どちらの火力が高いか勝負だ」


 その言葉を聞いて嫌な予感した。予感は当たった。


 絶対的な実力の差である。


 ベートルは黒き炎のつむじ風を使い、わたし達の炎を蹴散らす。


「弱いね……僕も七人勇者の邪気なんてやっているからね。そう、恋人のマリアが黒龍の犠牲にならなければ、僕が世界のもう半分を焼いてやったのに」







                  ***







———……。


 うん?急にベートルの動きが止まる。


「僕はマリアを守れなかった……。僕とマリアは奴隷として一緒に育った。昼間は強制労働、夜は鉄格子の中で寝た。僕はいつの間にか邪気を操れることができるようになった。僕は邪気の力で奴隷商人に僕達を買った貴族も皆殺しにした。それはマリアと共に得た自由であった。そんな時に黒龍が現れ、無抵抗なマリアは炎に飲まれた。マリアを失った僕の邪気の強さはましていくのが感じられた」

「何故、そんな話を今する?」


 わたしの問いにベートルはさっきまでの勢いはなくベートルは呆然と立っていた。


「その目……マリアに似ている。やはり、僕が殺してしまわないとダメか……」


 !!!


 ベートルは凄まじい邪気を放ち我を見失っているようだ。


「ベートルは黒龍を倒した後、この洞窟に籠り、恋人のマリアのことだけ考えていたのか、孤独な日々は邪気の力を増し世界を焼きつくす力を得たと思われる」


 ジルの言葉に邪気が邪気である由縁がわかった。


「マリア、こんどこそ一緒に死のう」


 ベートルの黒き炎はわたしを襲う。くっ、このままでは焼き殺されてしまう。


「アリサ君、炎のマテリアルを砕け!一瞬だが莫大な力を放出できる」


 ジルが叫ぶ。その叫びにレナが止める。


「その炎のマテリアルはジルの力の象徴、砕けばジルの力は失われる」


レナの言葉にジルは笑って。


「問題ない、それより邪気を止めるのが先決だ」


 わたしは頷き炎のマテリアルを砕く。すると、グランドブレーカーは紅く染まり邪気に対抗できるのであった。

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