第5話 お見舞い2

市長の屋敷に着くまでさほど時間がかからなかった。 道中、 また知らない人に話しかけられたりして時間食ったがなんとかたどりついた。


 田舎の町ではないのにえらく俺の名前が知られているようだ。


 その度にリロは仏頂面から天使のようなにこやかな笑顔に変わり私たち仲いいですよアピールをするのだった。 リロと肩でも組めばその様子ははたからみたら仲のいい兄弟に見えないこともないだろう。


 そんなことがありながらようやく市長が療養中の屋敷に到着した。 


 俺は子供のころを思い出して懐かしい気分になった。 市長のとは子供のころからの馴染みでよくこの屋敷に来ていたのだ。


 俺が墓守の仕事についてからは疎遠になってしまったが、 それでもそんなに時間は経ってない。


 俺は久しぶりに会うのを楽しみにしていた。 ドアの呼び鈴を鳴らすとすぐに秘書らしきひとが出てきた。 確か、 最近秘書になった人だった気がする。 


 疲れているのか目の下にクマが浮いていた。




「市長さんのお見舞いに来ました」




 俺は簡潔に述べた。 秘書は事情はを知っているようで、 すぐに市長に伝えてくると言うと扉を閉めた。


 数分もしないうちに扉が開き屋敷に入るように促された。




「市長に伝えたら跳ね起きましたよ。 随分仲がよろしいんですね。」




 屋敷に入ると市長が病気のためか必要最低限の使用人しか置いてないようだった。 頻繁に来なくなってからそんなに時間が経っていないので、 顔見知りも何人かいた。


 特に仕事がないのか皆一様集まってきてまさかヤードがこんなに有名になるとは思えなかったよと言うのだった。 


 顔見知りと久しぶりの再会を喜んでいると、 秘書がコホンと咳ばらいをした。


 すると、 使用人たちが蜘蛛の子を散らかしたように離れていった。


 どうやら市長が病気で秘書が指揮を執っていたみたいだしていたみたいだ。


 皆自分の持ち場に戻り、 働き始めた。




「街の英雄に失礼なことを……申し訳ありませんでした。




 秘書は頭を下げた。 俺はそんなことしなくても大丈夫ですと伝えた。 




「先ほどまで休んでいたいましたが、 お二人が着たとたん急に元気になりましたよ。


よっぽど仲がいいんですね」




 俺たちは秘書に執務室へと案内された。 どうやら市長の容体は安定しているらしい。


 しばらくの間会っていなかったので久しぶりの再会だ。 俺ははやる気持ちを抑えドアをノックした。




「どうぞ。 開けもても構いませんよ」




 扉を開けると記憶と寸分も変わらず市長がそこにいた。 病床だったとは思えないほど元気そうだった。 




「久しぶりですねヤード、 それにリロ。 二人に会える日を心待ちにしていました」




「久しぶりです市長。 失礼かもしませんけどあまり変わっていませんね。 お元気そうで良かった」




「改まらなくても結構です。 リコリスと呼んでください」




「じゃあ。 リコリス話はもう聞いているかもしれないから細かいところは省くけど、 俺が街で自由に動けるように許可を出してほしいんだ。 奴らまちのあちこちに出没してるらしいから今のままだと対処できないんだ。 そこで俺からの頼み頼めるかな?」




「勿論です。 あなたのことは昔から知っています。 だからあなたのことだから間違いはないでしょう。 許可します」




 リコリスは書類にサインすると書類を手渡した。 俺が書類受け取ると先ほどまで黙っていたリロが口を開いた。




「でも、 ヤードがこんなに強くなるなるなんて驚いたよね。 どこか頼りなかったヤードが今じゃ街の英雄扱いだし。 世の中ってわからないものだね。 そうだリコリスはどう思った? やっぱり信じられなかったでしょ」




「そうですねえ。 私としてはあんなに優しかったヤードがネクロマンサーとはいえ剣振るううことになるとは思いませんでしたよ。 話を聞いたときその事に驚きました。 墓守になる聞いた時も少し驚きました。 もっとちがう職に就くと思っていましたから。 そういえばなんで墓守になったんでしたっけ?」




「成りてがあんまりいなかったし、 なんとなく暇そうだなって思ったからだったかな。 今となっては我ながら不謹慎な理由だと思うけどね」




 それ以外にも空き時間に剣の練習が出来るからというのもあった。 実際、 昔は剣の練習も仕事だったらしい。


 今となってはやってきたことは間違いでは無いといえるが、 少し前は本当に意味があるのかわからなかった。 奴らが来るまでは……。




「ヤードが墓守になったおかげでこの街が守られているわけですから意味はあったと思いますよ。 ヤードがいなかったらどうなっていたか」




「あたしもそう思うよ。 あの一件以来墓守のイメージだだ下がりだったし、 いてくれて良かったと思うよ」




 俺は二人から褒められて照れ臭くなった。 確かにあの一件以来、 墓守のイメージは回復している気がする。




「あの一件で市長までダメージが行ったのは残念だったけど、 ネクロマンサーが攻めてきてからはあまり言われなくなったよね。 それどころじゃないからな気がするけど」


「そうですね。 あの一件でみなさん苦労しましたからね……」


 段々と口数が少なくなっっていった。 二人ともあの事件を思い出しているんだろう。


 俺も記憶を探りあの事件が起きたあの日を思い返してみることにした。


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