第4話 お見舞い

 俺がネクロマンサー達を撃退してから俺は街でちょっとした有名人になっていた。

 道をあるけば声をかけられるし、 時には握手を求められたりした。

 時たまなんでそんなに強いんですかと聞かれるが、 魔闘というスキルを持っているからですよなんて言えないのでたゆまぬ努力のおかげですという心にもないことを言うしかなかった。


「努力なんかしてるところ見たことないけどなあ」


 俺はギクってなった。 同じ班なため一緒にいる時間が長いリロは街の人同じようにごまかせない。


「努力している所見せたくなかったんだよ。 かっこ悪いからさ。 最初なんて自分の足斬りそうになったしさ。 でも、 リロには言っておくべきだったかな?」


「別に……」

 リロはため息交じりに呟いた。 

 なんかあの一件以来、 リロの態度が冷たい気がする。 それは多分クロネのことを話していないせいだと思う。 リロからしたら急に強くなったとしか思えないだろう。


「幼馴染みが活躍したんだから褒めてもいいだろう」


「だってヤードが別人になった気がするんだもん。 人当たりはいいし、 気が利くし強いしでなんか変な感じ。 普段のヤードはそんなじゃなかったよ」


「そんなこと言うなよ」


 俺はリロの俺への評価が気になった。 以前はどう思われていたんだろうか?

 気落ちした俺は項垂れた。 そんな俺慰めてアピールもリロには通じなかった。


「ところでこれから時間ある? 市長さんのお見舞いに行きたいから付き合ってほしいんだけど……」


俺はハッとした。 最近、 忙しくて大事なことを忘れていた。 市長とは昔ながらの付き合い……簡単に言えば馴染みだ。 

 リロと一緒に子供の頃よく遊んだんだ。 だからいつかは見舞いにこうとしたがすっかり忘れていた。 

 それを覚えているリロはなんだかんだしっかりしていると思った。


「お見舞いに行くのはいいけどなにを持っていくんだ? つーか、 何も持っていないよな」


「これから事務所に行って果物とか取りに行くんでしょうが。 ボルガ班長が用意してくれてるみたい」


「わかった。 行こうか」


 落ち込んでいても仕方ないので俺は気を取り直すことにした。 ここから事務所まではそう遠くはない。 俺とリロは事務所に向かう異にした。

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事務所に着くと事務所は慌ただしく普段の長閑な様子はあまり見られなかった。 着くとすぐにボルガ班長がやってきた。 俺は開口一番、 なんでこんなに忙しいのか聞くことにした。

 するとボルガ班長は意外なことを言い出した。


「ヤード。 お前のおがげだ」


 言われた俺はきょとんとした。 いきなりそんなことを言われても俺は理由がわからず困惑した。 そんな様子を見かねたのかボルガ班長は口を開いた。


「なに。 そんなに悪いことじゃない。 最近、 ネクロマンサー達と戦っているだろ。 どうやらそいつらの仲間なのか知らないが他のネクロマンサーが街の周囲で暴れているらしいんだ。 精々通行人に嫌がらせしたり大したことをしているわけではないんだが……おっというもの癖で話が長くなってしまったな。 簡単に言えばヤード! お前の力を貸してくれという依頼だ」


「俺の力なら貸しますけどいいんですか? 勝手にやっちゃって。 今までは墓の周辺でしたけど、 街全体となると危険じゃないですか? 剣片手に走り回りわけだしあの一件もあるし……それこそ市長に許可を取らないと」


 俺は難色を示した。 あの一件は俺たち墓守も多少は関りがあるのであまりこちらから強く出れない。 

 あの一件で俺たち墓守も多少なりともダメージは受けた。 今の市長の親父さんに大分お世話になったので、 こちらとしてもできるならやってやりたい。 


「そこでな。 市長さんからお前たちに話したいことがあるそうだ。 そこでそこに果物あるだろ。 リロから聞いているかもしれないが、 それを持って行ってくれないか? 俺が行くより見知った顔が行ったほうが安心するだろう」


 ボルガ班長が顎で示した。 そこには墓守たちが食事などで使うテーブルが置かれていて、 今日は忙しいせいか誰も食事をとっていないが、 事務所にいるときは普段は俺やリロもこのテーブルを使うのだった。

 今日は出払っている墓守も多いためそこには食事の代わりに高級そうな果物が籠に入れられていた。


「リロから聞いてますから大体わかりますけどこれですか? 無くてもいいんじゃないですか。 俺たち変えるくらいじゃ口に合わないかも」

「俺もそう思ったが手ぶらというわけにはいかないだろ。 俺が行っても仕方ない。 お前たちが行ってくれ。 市長さんもその方が嬉しいだろう」

「わかりました。 俺とリロで行ってきます」


 俺が籠に入った果物を取ろうとすると、 リロが口を開いた。


「でも、 図々しくありませんか? あの一件であんなことしといいて困ったときに頼るなんて……」


「困ったときは助け合うのが当然だ。 同じ街の住人だしな」


「でも、 結構酷いこといわれましたよ。 墓守はちょっとって言われたのがトラウマです。


 結構酷いこと言われているんだなと俺は思った。 俺は精々暗いぐらいか? 

 それも十分酷いか。


「行くのか行かないのかどっちだ? いろいろ立て込んでいるんだ。 市長さんに早く顔を見せてやれ」


 リロはしぶしぶ頷くとテーブルに歩み寄り籠を取った。 俺が持つよと言おうとしたらこんな事を言われた。


「今ードに持たせると周りから何か言われそうだかあたしが持つ。 そんなに遠くないし大丈夫。 あたしだって戦えるし」


 リロはそういうとそそくさと出て行ってしまった。 俺はポツンと突っ立ったまま呆気に取られていた。

「最近仲でも悪いのか? リロがふてくされている気がするがなんか理由があるのか」


「ないと思います。 昔からあんなもんですよ。 子供の時から一緒だし」


「だといいが……今度聞いてみろ。 何事も早いほうがいい。 見舞いもな」


 俺はボルガ班長の一言で見舞いに行くことを思い出し慌てて出口に向かった。

 そこにはそんなに待たせていない物調ずらのリロが立っていた。

 俺は不機嫌な理由を聞こうとしたが藪蛇なりそうで止めた。 

 市長が寝込んでいる屋敷にたどり着くまで従者のように付き従うリロに違和感を感じたが、 結局黙ったまま屋敷にたどり着いた。

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