第12怪 無形の刃 その2
合コンの翌週の土曜日。
寮内の空気はそわそわしている。
合コンの翌週は、合コン相手が電話をしてくる。
※幹事がそういう取り決めを事前説明している。
玄関横の受付登板の学生は、寮唯一の黒電話に視線を向けている。
チリリーン
【はい、なにがし大学学生寮です】
【あの~ほにゃ短大の田中といいます、二番館一回生の五郎丸君お願いします】
【はいわかりました】
【え~二番館5号室 五郎丸君 お電話です 受付電話までお越しください!】
置いている受話器から黄色い女子たちの声が漏れ聞こえる。
緊張の面持ちで電話に出る五郎丸君。
一回生の田舎者にとって女子からの電話なんて心臓が破裂しそうな出来事。
だいたいのパターンは翌週の土日に初デートの予約をする。
そんな緊張のそわそわ土曜日の時間が過ぎ、夕方近くは期待が成就しなかった男どもの
あきらめの怨念が空気を澱ませる。
受付の電話取次は19時まで。
そろそろと当番学生が片付けようとすると黒電話が鳴る。
ちょうど集団浴場に向かおうと階の後輩と受付前を通りかかった僕はその当番に呼び止められる。
【先輩お電話です ほにゃ短大の佐藤しおりさんです!】
どよめく後輩。
先輩卑怯~抜け駆け~。
なんてタイミングだ!
電話の相手は、門限で先に帰った眼鏡っ子女子だった。
【あの~ 覚えておられますか 先輩 佐藤しおりです】
震える声でフルネーム。
【先輩がよろしければ来週の土曜日に大濠公園行きませんか】
【あの あの よろしければ、いえ、どうしても お願いします!】
僕はうれしかった。
女の子から誘われるなんて無かったからね。
【いいよ】
と二つ返事した。
眠るにはまだ早いですよ ふぁーぷる @s_araking
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