第3話

 どうして俺は許婚に1年後まで会うことができないのか。彼女ヨミが12歳だったときは頻繁に交流を持っていたのに。薫は彼女の家に行っているのにどうして、俺は駄目なのか。許婚の俺よりも薫の方が彼女と親しくなってしまうのではないか、彼女を薫に取られるのではないかと不安は日を重ねるごとに大きくなっていく。薫は3年前に万代ましろの家に行く前から彼女に好意を抱いている。10年以上一緒に育ってきたんだ。俺が薫の変化に気がつかないはずがない。そんな薫をどうして父上は彼女の家に派遣したのだろうか。

一人で考えていたって答えは出ないことはわかってはいるけれど、それでも考えてしまうことはあるのだ。


–特に薫に関わることは…

幼い頃は気にしたことがなかったが、薫は妾腹の生まれだ。しかも、無能だった。薫の母は、とても強いお方だった。力を受け継いだ子が産まれたら家の地位が今よりもさらに確固たるものになることを期待されていた。妾腹であるから当主にはなれないけれど、補佐として一生俺に仕えることが薫に望まれていたことだった。しかし、薫には何の力もなかった。力が後天的に現れることなどない。力の有無は生まれた時にすぐに解る。力のあるものは、宝玉を握って握って生まれてくる。どこでその石が作られているのかは不明だが、力が使える理由もわからないのだからそんなものだろう。ちなみに、俺は菫青石を持って生まれてきた。ヨミも同じ石だ。

もともと万代ましろの家とうちは親戚関係にあるのだが頻繁に婚姻によって互いの家の繋がりを深くしている。俺たちも生まれる前から婚姻が決まっていた。あっちの家は思いもよらず双子だったため、ヨミかヒナかでちょっと揉めたようだが、俺と同じ菫青石を持って生まれたヨミが適当なのではないかということで俺の許婚はヨミに決まった。


俺の許嫁なのになぜ薫が


やっぱり一人では何も解決しないようだ



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月が綺麗な夜でした 郁野ゆじあ @yujia_19

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