みんなが絶望すると、その世界線は終わると言うのに。

少しずつ世界が、薄れて行っているのが解った。

虚無に包まれた世界は、いずれ終わる。


「希望を持つことが悪とされ、正しい人々は、それに従った。」


そう言う少女の姿も少しずつ薄くなっていた。

みんなが絶望すると、その世界線は終わると言うのに。


「あなたも違う世界に逃げないの?」

「わたしはいい」


拒否する少女の手を掴もうとしたけど、時は既に遅かった。


そして世界は、泡のように消えた。

何事もなかったかのように。


                  かしこ



一瞬だけ手を握るのが速かったパターン。


少女の瞳から、涙が零れ落ちた。


わたしは、そこの真実を感じた。

だから、素早く少女の手を掴むんだ。

柔らかく温かな感触を感じながら、強く引っ張った。


希望を持つことが悪とされない世界に。


世界の変化に、少女から憂いは消え、微笑みを浮かべた。


「ありがと」


少女は言った。


                   かしこ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

伊素健吟遊(いそたけぎんゆう) 五木史人 @ituki-siso

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ