はっぴばーすでー、いーちー。
長月十伍
H-B, 1st.Sept
花の好きな人。
第一印象を訊かれれば、そう答えるでしょう。
ああ、若しくは――著者名の付け方が一緒であると奇遇な出逢い方をした人。そちらの方が印象深いのかもしれない。
でもきっと、訊かれれば私は前者で答えるでしょう。
花を擬人化し花言葉をモチーフとした能力を持たせる、といういつかどこかでファンタジー作家なら通ったようなアイデアを、これでもかと貫いた素敵な物語を織り上げた人だから。
私も花は好きなんです。
一番好きなのはマドンナリリィでしょうか。或いは鉄砲百合。カサブランカもいい。
あとはエーデルワイス、それからスノードロップ。
勿論、それらを擬人化した、或いはその花をモチーフとしたキャラクターを描いたことはありますし、そのキャラクターが生きる物語を描いたこともあります。
しかし、一さん(私も長月なので敢えてこう呼びますね)に敵わないなぁ、と思ったのは、前作「花の魔王の物語」でのラスト。
あの突き抜け方は、本当に感動しました。
花への愛もさることながら、その何十倍もあろうかと言うほどの、物語への愛情を私は感じ、ちょっと恥ずかしいのですが少し泣いてしまいました。
物語を、その世界で歯を食いしばって苦しみに耐え抜き、困難を乗り越えてきたキャラクターたちに笑顔で終わらせるために心血を注いだ痕跡が見えるようでした。
そんな一さんが現在綴っているのは、「リンネ転生109」という物語。
異世界転生という一大ジャンルを相手に、そもそも転生というシステムと対峙する構成で尚且つ現実にも謎を置き、そして何度も異世界転生を繰り返しているのは主人公リンネだけではない、という風呂敷の広げ方。
まだ十回ちょっとしか転生してませんので、あと九十回以上は新たな展開に悩まされる、という楽しみな物語。
一さん、私なら途中の五十回とか絶対はしょるよ。
転生三回目、の次は六回目にする、とかして数字を稼ぐよ。そういう小手先は得意だからね。
でもきっと、あなたはちゃんと109回を書き連ねるんでしょうね。
なので楽しみにさせていただきます。
では物書きらしく、最後は物語を連ねて終わりましょう。あ。ごめん、ポエトリーかも。まぁいいよね。
それでは、宜候──
◆
気がつけば掌の中に、小さな粒が握られている。
あなたはそれを見て、きっと何かの種だろう、そう言った。
ああ、確かに。
あなたにはそう見えるのかもしれないな、なんて────
よく花を語る人だと思う。
同時に、よく夢を語る人だとも。
けれど、あなたのその語りを聴いて思うのは、咲くのはいつも話の花ばかりだ、ってこと。
あなたの語る世界は鳥の囀りや羽音の歌のように心地がいいものだから、ついつい聴き入ってしまうのだけれど。
いつか芽が出ますようにと、あなたは今日もまた粒を植えた土に水を遣る。
芽は出ないかもしれない。
葉を広げないかもしれない。
枝を伸ばさないかもしれない。
根付かないかもしれない。
それでもあなたは。
花の咲かないなんてことは無いと、いつも夢と向き合っている。
現実はいつだって現実そのもので、唐突に理想に沿うことも無ければ、幻想を抱くことも、「
宝くじが当たらないのと、よく似ているね。
それでもあなたは。
実をつけないなんてことは無いと、いつも夢と向き合っている。
それが何の種かは分からない。
そもそも種かどうかすら分からない。
水をあげなくてもいいのかもしれない。
寧ろ根腐れてしまうのかもしれない。
でも、きっと誰だってそうだ。
だから、根拠なんて無いかもしれないあなた自身の頑張りで、あなたが咲かすしかないのだ。
変わらない現実に生きながら、あなたにしか咲かせられない物語を、あなたが咲かせるしかないのだ。
大丈夫。優しい魔王様の物語はちゃんと咲いたんだよ。
そして今日もあなたは水を遣る。
その姿をまたここから見守っている。
心から希う。
どうぞ、咲きますように。
たくさん、たくさんたくさん咲いますように。
少なくとも私を、たくさん咲わせてくれたあなたなのだから。
長月一さん、ハッピーバースデイ。
あなたのいちファン、長月十伍より。
はっぴばーすでー、いーちー。 長月十伍 @15_nagatsuki
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