第41話 終わりに寄せて

 今日でこのシリーズも、ひとまず終わりになります。まだまだ語り尽くせない話がいっぱいあるのですが(たとえば、やっと完見した『ほしのこえ』の話とか、読了できた『鹿の王 上下』の話とか)、いつまでもズルズルやっていても意味がないと思いました。

 これまで触れていなかったSFのテーマについて、この機会にご紹介します。

 SFのテーマとして考えられるのは、

 1:長距離旅行

 2:科学の驚異

 3:人間と機械

 4:進歩

 5:人間とその社会

 6:人間とその未来

 7:戦争

 8:大変動

 9:人間とその環境

 10:超能力

 11:超人類

 12:人間と異星生物

 13:人間と宗教

 14:かいま見る多種多様な未来や過去

 ということが挙げられる、と80年代のアメリカSF作家協会は言っています(参:『SFの書き方』)。

 これとファンタジーを比較してみました。

1:長距離旅行

これは異世界だと移動だけで大変です。指輪物語やドラクエもほとんど移動です・


 2:科学の驚異

 魔法科学とか十分発達した科学が魔法の元とか。アメリカのSF作家アーサー・C・クラークも、そんなことをいってますね。


 3:人間と機械

 機械がないと言うことが有り難さをかんじさせたり……。不便であることで、創造性を発揮するとありそうです。

 4:進歩

 5:人間とその社会

 6:人間とその未来

 7:戦争

 8:大変動

 この辺は道具が違うだけですね。

 9:人間とその環境

 10:超能力

 ファンタジー的に言うなら、魔法かな。神通力?

 11:超人類

  亜人(エルフドワーフ・ケモミミ)

 12:人間と異星生物

人間っぽいモンスターという考え方があります。ゴブリン・コボルト・オークそのたですね。

 13:人間と宗教

 14:かいま見る多種多様な未来や過去


 このなかでも、ファンタジーとして扱いやすいのは、『超能力』としての魔法(あるいは科学技術)、人間とその社会、そして人間とその環境、人間と異星生物(異世界生物)といったものが挙げられると思います。主人公がなろう的な環境に転移するのも、「人間とその環境」もしくは「人間とその社会」にカテゴライズされるはずです。主人公の転移先がナーロッパ(つまり、ドラゴン・クエスト風のヨーロッパ)で、世界観がだいたい似たようなものであったとしても、そこで暮らしていくとなったらそれなりのオリジナリティーがなければ「売れる」小説にはならんわけですよ。

 

 ファンタジーにするには扱いにくいSFテーマが、もっとないかと考えてみたんですが、わたしにはちょっと思いつきません。なろうには、異世界に転生した主人公が、科学の驚異を使ってなりあがる話がごろごろしてますし、進歩だってある。


 たとえば、プラスティックのない世界に行った主人公が、コンビニ店をつくるさいに日本からプラスティックを持ち込んで なりあがったり、あるいは、スマホを使って異世界の賢者になる話もあった。薬を進歩させ、いままで治らなかった病気やケガを治したり、『レベルアップ』して使えなかったワザを使って魔物も倒せる。魔王を倒すという明白な目標(未来)もありますし、逆に魔王がこっちにやってきて、ユーチューブで成り上がる話もあります。世界観はワンパターンですが、ストーリーは百花繚乱ですね。SFを知らなくても、なろうさえ読んでいれば、SFマインドが醸成されるかもしれません!


 科学が万能じゃないことがわかってきたからこそ、異世界や魔法がもてはやされる時代なのでしょう。呪文さえとなえれば、なんでも夢が叶うことは、少年少女の見果てぬ夢です。わたしも子どもの頃には、『ひみつのアッコちゃん』のコンパクトを買ってもらって、テクマクマヤコンなんて唱えてました。だけどファンタジーもいずれ衰える。では、次に何が現れるのか。わたしに代案があるわけじゃない。

 

 現代という時代は、夢が現実に侵蝕してきて、どこまでが夢なのかが曖昧になりつつある時代です。美しい夢ならそれもいい。けれど、夢はコントロールできるものではないですから、悪夢に変わることもある。地震・噴火・台風・飢餓・戦争……。さしせまった問題が山積みになっているこの時代。夢から覚めたときに、現実へと対峙する力を人々が得ていることを、わたしは願ってやみません。そのときにこそ、ファンタジーは現実逃避文学じゃないと胸を張れるというものです。作家たちに期待します。

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SF・ファンタジーが好きですが、なにか? 田島絵里子 @hatoule

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