第40話 『亡念のザムド』は宗教SF
『亡念のザムド』シリーズ完見しました。
オープニングもエンディングもテーマが格好いいし、映像も綺麗。
物語も、ヒロインのハルの凛々しく強い思いが、胸に迫ってきます。アキユキはいまひとつ、 しっかりしていないけど(滝汗)
世界観も、この世界の文化(北側と南側)などきっちりしてる。とくにルリコン教が興味深い。
たとえばルリコン教団が、イスラム教の自爆テロを思わせるところが若干ありました。自分の信念のために、無関係な人を巻き込んで戦いに赴かせる。
それでルリコン教に対して、かなりわたしは嫌悪感があったんですが、かれらにはかれらの理屈があって……。
それにからんでいく軍人や科学者、国際郵便船やテシクの村の人々……
ルリコン教やザムドと軍が絡む。北の言い分がわからないけど、南のやり口は卑劣。北のせいだといって、ほんとは自作自演。
しかしまー、なんというか、考えてみないとわけがわからないお話ではありました。解説しているはてなブログもちょっくら拝読しましたが、やっぱりちょっとわかりにくい。ルイコン教と北・南の関係性とか、途中出てきた目玉の塔とか、ルリコン教の教祖さんの話とか、用語がいっぱい出ていて、一度で理解するのは大変です。
それに、アキユキは、第1シーズンのOPのお約束をやぶって、フルザムド化していたのは冒頭の1話だけでした。それはつまり、自分をコントロールできるようになったからだと思うのですが、ちょっと不満ではある(笑)
驚いたことがあります。このストーリー、時の流れるのがめちゃ早い。さっきまでアキユキは、自分一人で生きていけると突っ張っていたのに、しばらく見ていたらいきなり「共に生きる」と言い出してくる。この、「共に生きる」とか「自分で考える」といったセリフは、キーワードとして何回かこのアニメにでてきます。そしてアキユキが、共に生き、自分で考えた結果どうなったかは、まあ、ネタバレのため、自粛します。
このシリーズで宗教について語っているのを見ていると、日本人の中にも、イスラム教についていろいろ思う人がいるのだな、と思ったりもします。SFのテーマの中には、異星人との交流があるという話もあるので、このシリーズは宗教SFとして見ることが出来るかも知れません。生物兵器が出てきたり、種がワクチンを産んだり、たしかにファンタジーと言うにはちょっと科学的すぎる。ていうか、この話、疑似科学をモチーフにしているので、SFというにはちょっとばかり、ジャンルが違う気がする。ゆえに宗教SF。
ザムドという種をまくことで、ルリコン教はなにをしようとしているのか。
という点は、ストーリー上の秘密としてとっておくとして、これは逆に、イスラム教のテロという種をまくことで、ISは何をしようとしているのか、という問いかけもできます。
武力により、ムリヤリ自分の主張を押しつけるのを批判するのは、たやすいことです。
しかしISも、この作品の中にあるように、「加害者として」自覚しているのかもしれない。加害者として平和をもたらす。それが自分の使命だと。
戦争をするにあたって、自分が正義だと信じられないままに戦うのって、つらいよねえ。
だから、加害者として歴史に名を残し、平和をもたらすという考え方は、男としては納得できるのかもしれない。
宗教には、人を盲目にする力があります。光を見すぎてほかが見えなくなっちゃうのね。
ルリコン教は、ほんらい平和的な宗教であるように、わたしには思えます。また、そうでなければ、あれだけ突っ張っていたアキユキが、納得して天心に帰依するはずもないし、ナキアミの誠実さをみると、そんなに悪い宗教でもない気がする。ISは輪廻転生は信じていませんが、ルリコン教は輪廻転生はあると説いているもようで、アキユキもそれに感化されてるのかな。
軍人の垣巣(かきす)については、わたしはわりと好きなキャラクターだったりします。あの潔癖な顔と、ナルシストな態度。そして、選民思想……。どこかで会ったことがあるかも(笑)
このように、この作品では、わかりにくいなりにキャラクターが立っています。わたしはフルイチくんがいちばん気の毒でした。ままならぬ恋心。「おれが光にならなけりゃ、おまえを照らしてやれない」このセリフはしびれますねえ。ハルちゃんにはもったいないなと思ったりもします。
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