第39話 『愚者の星』は復讐SF

 ネ友に教えていただいた作品は、『空挺ドラゴンズ』と『愚者の星』そして『ゴーメンガースト』『亡念のザムド』でしたが、すでに『空挺ドラゴンズ』と『ゴーメンガースト』は、ご紹介しました。

 今回ご紹介しますのは、『愚者の星』です。これはあきらかに変身系SFもので、言って見れば仮面ライダーの部類に入るかもしれません。

『愚者の星』第一巻を読んだ限りでの感想ですが、「おー、復讐ものだ~」でした。変身ものは、『バオー 来訪者』(荒木飛呂彦)で読んだことがあるので、さほど違和感はありませんでしたが、いじめられっ子のシンタがかわいそうでねえ。身につまされてなりませんでした。

 ストーリーは、以下の通りです。


 

(ネットより引用開始)

 数世紀にわたり惑星連邦から見捨てられていた植民星スラースで、貴重な鉱物資源が発見された。再び大量の移民と開発の波が押し寄せる一方、差別を受けた原住スラース人達の間で独立運動が拡大。遂に新国家の建国を宣言するに至る。戦争の危機が迫るなか、スラース人と地球人との混血の少年シンタは家族を独立派に殺され、復讐の闘いに身を投じる……

(以上、ネットより引用終わり)


 

 アクションが凄いのなんのって。男の子が喜びそうだなぁと思います。刀と一体化したシンタの描写が、非常にリアルでした。刀に意志がある、という日本古来の話を思い出します。

 SF的な部分と言うよりシンタを見ていると、刀と一体化するということで力を得るという点が、どこか伝奇ファンタジーぽい。

 継承者というフレーズが出てきて、これが重要なキーワードになっているわけですが、どんな力でも代償は必要なわけですよ。シンタの場合、それは外見が変わることなのですが、それはつまり、内面も変化するということになる。

 

 いままで、いじめられっ子で、どちらかというとヤラレっぱなし感の強いキャラだったのが、継承者になることで一転、強さに傾倒していく。

 人間ドラマとしてよく出来ています。背景になる刀にも、なにかSF的な秘密がありそうで、ちょっと興味がそそられてしまいます。

 

 そのパワーを使いこなすためには、血筋が必要ということらしいんですが。

 

 御先祖さんという考え方がうすくなってきつつある日本において、この考え方は、ちょっとふるいかもしれない。血筋がよくないとパワーが使えないなんて、選ばれてない人がお気の毒です。選ばれた人がいるとなると、選ばれなかった人もいるわけです。その間の対立と嫉妬、憎しみ。


 継承に段階がある、ということで、継承の段階があがると同時に、パワーも強くなっていくってところがゲーム的です。

 

 王家の血筋が偉大な力を継承する、というパターンは、『天空の城ラピュタ』でも見られる黄金のパターンです。『ラピュタ』の場合は、飛行石と城の秘密兵器のカギを、王女シータが持っていました。あるいは、『カリオストロの城』でも、公女クラリスが、偉大な遺産を持っていると言うことで、カリオストロ伯爵にねらわれていましたっけ。

 

 『ラピュタ』も『カリ城』も、弱い立場の女の子を、男の子が助けるボーイ・ミーツ・ガール的な面がありますが、この『愚者の星』はもっとダークです。なにしろテーマが復讐ですからね。わたしも身内に許せない人がいるから、ものすごく共感してしまいます(笑)

 

 いじめられっ子がざまあして、大逆転していくうちに、壮大な戦いに巻き込まれていくパターンといえば、わたしは『ハリポタ』を思い出します。『ハリポタ』の主人公ハリーは、おじさんにいじめられていましたが、ラストに近づくにつれておじさんどころか、魔法使い同士の壮大な戦いに身を投じていくことになるんです。このあたり、黄金のパターンを踏んでるなと思います。

 

 姿が異形になってしまうあたりは、『バオー』みたいなところが有りますが、それがどんどん進化した形に「承認されて」いくところが、ドキドキポイントでしょうね。男の子でなくても、自分が変身していきたいという気持ちは持っていますから。

 

 第一巻は、いいところで終わってしまって残念でしたが、続きは相変わらずおカネがないので買えません(涙)。シンタは復讐を遂げるのか。スタースは独立できるのか。気になるお話でした。

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