徒花

薄星

カンテラを亡くした亡者


誰かに守られてるから、皆が肯定してくれるから、私たち愛してますって?

自分の気持ちすらわからない、何に傷ついて、何に苛ついているのかもわからないくらい頭の中グチャグチャなんだよ

貴方たちは何の疑いもせずに、好きなものを好きだと思い、それを公言する。

きっとそれも私と同じで、疑えば揺れてしまうものだろうけど。

自分自身と向き合うことは何よりも恐ろしいから、わかりやすい他人の心を批評して目を反らし続けている。

本当の自分こそ見えにくくてわからなから。

視ようとすればするほど、深くて視えなくて怖くなるから。

でもそれは仕方のない事、ただ自分があれこれ言われて傷つきたくないことからくる思想。

それのどこが悪いのかわからないけれど、他人からは好かれないのだろう、否定されたくないから、正しいと思いたいから。

他人が間違っている、異常だと判別することによって、相対的に自分を正しいと思いたいのか。

評価とは、他と比べて、優れているか、劣っているかによって決められることだから、自分を評価するためには、他人も評価しなくてはいけないのは、仕方のないことだけれど。

腐った受け入れがたい思想、そう思ってしまうのは、私も同じ人間だからか。

どれだけ相手は醜く、自身はきれいな色だと思ったところで、どちらもただの色には変わりない。

思想が違うだけで、原理や、やっていることは同じにすぎない。

上か下か、ただの粗さがしか、何のためか、勿論自分のためか。

結局人は自分のためにしか行動できないのだから、誰かのためにと銘打って行動するものを偽善者だと叩くだろうか。

この世の全てには理由があって、その個人においては正しいのだと知っているから、他人のどのような悪事も、非常識的な行為も、否定できなくなってしまった。

そのせいか、自分という形が一体何なのかわからなくなってしまった。

正しい事も、他人からすれば間違いだって、それが人の数だけ続いていて。

自分の信じている事だって、完全な間違いではないけれど、絶対的な正しさでもない。

全てを強制できるような強固な棒なんかじゃない。

だから自分を見失わず、信じ続けていなければいけないのに。

私は何一つ信じる事が出来なくなってしまった。

あらゆる物事を裏返してみても、結局どっちも裏でしかない。

何一つ満足にこなせない。

結果としては一番最悪の物。

私は本当は何がしたいのか、何が欲しいのか、何も知らないのにわかるわけない。

他人が幸せでいるためには、何よりも私が幸せでなければいけない。

この世は暗黒、常に闇がそこにある。

光がそれを覆い隠しても、この体の中にまで、宇宙の闇は広がっている。

だからせめて自分ですら見つけられなくならないように、心に確かなカンテラを持っていなくてはいけない。

そのはずなのに、今の私は目を閉じて、事実を拒む赤子のよう。

灯は、どこにいってしまったの。

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徒花 薄星 @marou410

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