約束

藤 凌太

第1話

「やっと卒業だ」

早く中学を卒業してしまいたいと願っていた少年の願いが叶った。少年の名は今田勇太。勇太は3月10日にS中学校を卒業した。卒業式の日は、前日まで続いた大雨が嘘であったかのような、春を感じさせる快晴の日だった。だが、勇太の心は、その日の快晴に関係なく、どんよりとかなり沈んでいた。

当日、式の前から、多くの生徒が式の後にある写真撮影を楽しみにわくわくしていた。だが、勇太は違った。勇太は早く帰りたいと誰よりも願っていた。勇太には写真を撮る友達がほとんどいなかったのだ。勇太はコミュニケーションが苦手で、友達はそれほど多くはなかった。「その時になれば、色んな人と写真が撮れるかもしれない。」そんな希望を少しばかり抱きながら式の後、勇太は中庭を歩き回ったが、2.3人としか写真を撮れずにすぐ帰宅した。

「いいなー。俺ももっと写真撮りたかったなー。」

勇太の心には卒業式が少し苦い思い出として刻まれた。

そんな勇太は4月7日にR高校の入学式を迎え、晴れて高校生となった。中学の卒業式のこともあり、高校ではたくさん友達を作ろうと心に決めていた勇太は、入学式の日にクラスメイトの数人と連絡先を交換することに成功した。その中に1つだけ女の子の連絡先もあった。それは中学が同じだった藤井鷹斗からもらったものだったのだが。鷹斗は幼稚園から中学まで同じで仲の良い親友だったが、偶然にも高校も同じで、そして同じクラスになったのだ。連絡先を交換した(勝手にもらった)女子の名前は高嶋彩子。鷹斗には彩子の連絡先を勇太に渡したことは伝えてもらった。彩子も同じクラスなのだが、勇太はまだ彩子の顔を知らない。そんな顔も知らない女子に初めてのメールを送った。異性ということもあり、少し緊張しながら。彩子との最初のメールのやりとりは至って普通であった。

勇太 「はじめまして。藤井から連絡先もらった今田勇太です。よろしくお願いします!」

彩子 「はじめまして!高嶋彩子です!よろしくね!」

初めの簡単な挨拶だけして、結局この時のやりとりは終わった。これから付き合うことになる2人のやりとりが。

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約束 藤 凌太 @ryo12114102

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