家の中

天球儀ナグルファル!d(*´ω`🎀)

第1話で終わる物語

 「母子家庭で良かった」と彼女は言った。

私には幾分、その心情は量りかねた。続く言葉は『できれば、姉や妹がいないのも条件』と控えめに付け加た。


 今日は、相手方の親に挨拶をする日。


 今どきかしこまって「娘さんを私にください」などと

おとこを全面に出した時代錯誤な浮いた台詞を交わすこともないだろう。彼女の家庭環境であれば尚更だ。

将来の同伴者を連れ、古びた和式建築の家の玄関へと歩を進める。「失礼します」


 上がりかまちは今までのセカイとコレカラを分断する結界を引いているようで異様であった。


 数分して、スルスルと衣擦れの音を立てながら、

奥の座敷と思われるむろから、小姓のような

老婆が姿をあらわした。

『まあ……あんたが、うちの……狭くるしいけんども、上がっててくだせえ』と手招きをし、招じる。

彼女の手を取り、これからはこの家の主人だと主張を効かせた勇み足で奥の間へと進む。 


 お座敷には、こじんまりとした卓がポツンと中央に位置していた。

机を挟んで相手方との複雑な心情含め相対する。

きっととしてはつく側を裏切られた形なのだろう。手が小刻みに震えている様子からも解る。心なしか険のある表情だ。怒りすら感じられる。

何故だろういぶかしむ、あまり、私は彼女の

後方を見やった。そこには家族の写真が据えられていた。

私は未来の妻となる伴侶に目を泳がせながらも

絶叫した。


 それからあとの事は一切憶えていない。

きっと私は表面だけの付き合いしかしてこなかったのであろう。

けれども心からの交流を賭してでも、

そう……きっと……家族の写真は観てはいけない

性差による『壁』なのかもしれない。








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家の中 天球儀ナグルファル!d(*´ω`🎀) @ZERO0312

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