第16話 エピローグ
「ねえねえ、聞いた?今日、転校生が来るらしいわよ」
「男子?女子?」
「なんでも、男子らしいわよ」
「イケメン?イケメンなの?」
「それは分からないけど。期待しちゃうわよね」
県立高校の1年生の教室。職員室で小耳に聞いた話で盛り上がる女子達の噂話。
だが、期待はあっけなく裏切られた。
「端山洋一です。よろしくお願いします」
ぼそぼそと挨拶しているのは、髪がボサボサのやせぎすで小柄な男子。
前髪で表情が良くわからない。
見た目から、どうみても影キャ。
その瞬間から、クラスの全員が転校生への興味が無くなったのであった。
夕方。
山崎法律事務所の扉が開き、陽一が入ってくる。
「こんにちわ、先生」
「やぁ、よく来たね。陽一君」
デスクから顔を上げて、声をかける山崎弁護士。
「先生、本当にありがとうございました。おかげで無事に、今日から新しい学校に通えました」
「どうだい?新しい家には慣れたかい?」
「まぁ、ぼちぼちですね」
山崎の尽力によって、陽一は母方の親戚に引き取られたのであった。
そのため、苗字も母の旧姓に変わり、転校した。
「それで、考えて来てくれたかい?」
「はい、こちらこそお願いしたいと思います。ぜひ、働かせてください」
そう言って、頭を下げる陽一。
山崎弁護士は、陽一にバイトとして弁護士事務所で働くことを提案していたのだ。
それを快諾した陽一。
陽一は、弁護士と言う職業に興味を覚えていた。
”弁護士仕事を手伝うことで、罪ほろぼしにはなさらないのは分かっている。自己満足でしかない。それでも・・・”
それでも、弁護士の仕事を手伝ってみたくなったのだ。
「よろしくお願いします。山崎先生」
「こちらこそ、よろしく。陽一君」
地獄に落ちた名探偵 三枝 優 @7487sakuya
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