散文

@vazakn

散文

あの人は言った。帰ってくると。必ず、そこに行くから、と───。



「待つ者」


白い小さな結晶が手元へと降る。足元の炭が音を立てながら崩れ、紅い火花が散った。音が吸収されている世界で私は空を見上げている。また一つ流れたと思ったのはどれくらい前だろう。夜明けが近づいているのか端の方は微かに白み、この時間の終わりを感じた。長く息を吐いてからもう一度首を擡げてみれば、始めの雲掛かっていたのとは違い、光で溢れている。惜しみつつ、さらに目を走らせてから目を閉じた。ずっと待っている。

言葉を信じて。あの人を。


「鼓動する者」


見つめてくる瞳があまりにも鋭すぎるから。目を背けてしまっていた。嫌いじゃない。好きじゃない。では何なのか。考えれば考える程、袋小路にはまっていくようだった。そんな時友人からの誘いで遊びに行った。毎年、この時節に行われる行事。会場にはたくさんの人が集っていて期待の大きさがうかがえる。夜に打ち上げられる巨大な花。嫌いじゃない。夢中になっている塊の中に見知った姿を見かけた。鮮やかではないけれど、心に鮮烈に宿っているもの。空気が震える音がする。それ以上に、うるさいものが頭を支配していた。

嫌いじゃない。好きじゃない?

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