あつい、なつのひの、ゆうがたの、きせき

アイリ（26歳） パパ（生きてたら57歳）

～アイリ（26歳　博士過程3年生）　パパ（生きてたら57歳）～

【8月19日】　　

あのね、パパ。

今日は、大・大・大発表があります！

明日、パパに会いに行きます。

パチパチパチパチ～。

【8月20日】

あのね、パパ

今日は研究室から日記を書いています。

なぜって？

それは、今からパパに会いに行く装置を起動させるからです！

私、いっぱい研究したよ。

そして、教授もビックリするくらい、すごい理論を考えたんだよ。

その理論を使って、パパに会いに行く装置を作っちゃいました！

最初の被験者は自分。

今から、四十年前の夕立の日、十八歳のパパに会いに行くね！

最高のお誕生日プレゼント！

ハッピーバースデー！

【8月21日】

あのね、パパ。

実験は成功したよ。

ちょっと頭痛がするけど元気だよ。

十八歳のパパはスリムでとっても可愛かった♡

パパの初恋の人が私だって知ったらビックリしちゃうよね。

でも、両想いなのでOK！

お話の途中で、突然、いなくなってごめんね。

もっとお話したかったなー。

理論上、気圧が低いときしか滞在できないの。

ちょうど、あの時、雨が降っていてラッキーでした。

パパの初恋を消さずにすんで本当によかったです！

【8月22日】

あのね、パパ。

今日は、ちょっとした種明かしをします。

「いつ、パパが会ったお姉さんが私だと気付いたか?」って話しです。

前に 『アガベ』 の話しをしたよね。

あれから、ずっとその花が気になっていました。

そして、いつの間にか大好きな花になっていました。

百年に一度咲くって、理系にはたまらないよね。

その話をママにしたら、カバンに『アガベ』の刺繍（ししゅう）をしてくれたの。

それを見たとき、ハッと気付いたんだ。

「この刺繍（ししゅう）がパパの見たやつだ！」って。

そして、「パパに会ったのは私だったんだ！」って。

で、「私がやらなきゃ」って。

【8月23日】

あのね、パパ。

今日、装置が動かないように細工をして来ちゃいました。

装置が悪の手に渡ったら大変なことになるからね。

ごめんなさい、教授！

なので、就職先をします。

パパが気になってたことを、ひとつ教えちゃいます。

聞き取れなかったお姉さんの最後の言葉です。

「大好きだよ、パパ、さよなら」　

って言ったんだよ。大した内容じゃなくて残念？

でも「好き」って言ってたんだよ～。

高校生に「パパ」って言えないよね。

だから小さい声になっちゃった。

実は……今日でパパ日記、最終回にしようと思います。

人生の節目ではちゃんと報告するので安心してね。

人気番組が終わったあとの特番みたいな感じで。

バイバイって言うのは寂しいので……

またね！

＜終＞