8. 羽ばたく蝶
この世界に入ってから1年がたとうとしている。
何人ものキャストと世話をしてくれる。
ボーイが居なくなって、また新人が入ってきた。
不況もあってか、
それぞれに個性がないと生き残れない社会になっている。
私は相変わらず空虚に仕事をこなしていた。
ある一人の女性が私を変える。
彼女は40代になろうとしている未婚の女性だった。
旦那に内緒でキャバをしている女性もたくさんいる。
指名を待っている時間に彼女と語らう時間があった。
「若いうちは男の言葉を信用したい時だよね。
都合よく自分の意見を曲げる男はこう言うわ。
容姿なんて関係ない。
俺は性格が好きなんだからってさ。
でもそれ嘘よ。
ある程度自分の好みに合った人だからそういっているだけ。
顔か身体の特徴を総合的に見て許せる範囲を超えている人に限って
かける言葉なんだよ。思い当たる節あるだろう」
「ええ」
一年間、接客した中で沢山見てきた。
口先だけの男たち。
自分が惚れた男も行っていた。その様な幻想。
「騙されている間は幸せですよね。きっと太ったりしたら捨てられる」
「そうだろうね。これから先は気をつけな」
忠告はありがたい。
でも恋に踏み込む勇気はまだない。
まだ空虚で生きている。
留まるべきか進むべきか
悩んでいるときにかみさんがアドバイスしてくれたの。
「たしかにそうだな。っていうか全体的にここに来る人って
一途っていうか男に求める者が高いんだよな。
そんな男居ないって。小説の中だけ。
現実は性欲の塊。
綺麗なものには目がいくものなの。
それが男の性なんですから」
「きっぱりいいますね」
「そ。そういうあほに引っかからない魔法の言葉教えてやろうか。
『私は王者。誰にも負けない。一番偉いし能力ある』」
「自意識過剰~」
「それでろくでなしはいなくなる」
「これホントだから。しんじてみろよ」
結局それからまっとうなみちを選んだ。
そして職場で出会った人と結婚したわ。
もちろんこれまでの経緯をはなしたわ。
そしたら馬鹿だなって言われたの。
目茶苦茶おこられた。
頭はいいのにどうしてそんな決断したんだって。
こんなに私のこと起こってくれる人初めてで、
どう弁解してもぷくって膨れちゃうの。
でもきちんと許してもらえた。
きっと私は幸運なんだね。
やっと手紙の返事出せます。
私のことで真剣に怒ってくれる優しい人を見つけちゃいました。
今日はあなたの誕生日でもあり、命日でもある日だね。
これからしあわせになります。
有難う。
END
想いあい愛した男と夜の蝶 完 朝香るか @kouhi-sairin
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