第16射 3人の美少女、そのじゅういち


「くくくっ……ハっ、ハルクって……完全に名前負けしてんじゃんww」


「……あのぉ、急にどうしたんですかぁ? 早くゴミ掃除しないとぉ」


 ハルク共が迫りくる最中、思い出し笑い中の俺に話し掛けるキュピィちゃん。今度はホブゴブリンをゴミ扱いしてるよ……って、んなことより! そりゃ心配になるよな、こんな笑ってる奴のこと。だけど安心してくれ! ちゃーんと策は考えてあるからさ!


「ふぅ……任せとけ! 真のチカラってやつを見せてやるぜ!」


 親指を立て、キュピィちゃんに向けてキメ顔をする俺。そのキメ顔を見て苦笑いのキュピィちゃんは、すぐそこまで迫るハルク共に気づき、腰にある短剣に手を掛ける。


「ちょっと待った! 初っ端は俺にやらせてくれ!」


 俺がしゃしゃり出ると、キュピィちゃんは仕方ないなって表情で短剣から手を離し、それを見届けた俺は「わりぃ」と彼女に謝ってからハルク共に向けて魔法を放つ。


「これが真のチカラだ……くらえ! ピール! ピール! ピール! ピール! ピール!」


 左手から連射されたピンクの光は漏れなくハルク共に直撃。突然の魔法に狼狽える奴らだったが、少し経っても異変がないことに気づくと、ニヤリと笑って再び動き出す。


「……は? なんともない……だと?」


 ちょちょちょっ、ちょっと待ったぁぁぁっ!! あのさ! なんでなんともないの!? 俺魔法掛けたよね!? ちゃんと当たったよね!? 全身ピンクに光ったよね!? なのに! どうしてピンピンしてんだよぉぉぉーっ!!


 ーーという想定外の結果に脳内はパニクる……が、顔には出さず、険しい表情で「くそっ、しゃーねぇ」と背負った刀に手を掛けると、眼前に迫るハルク共が大声を上げながら武器を振り上げた。

 

「「グギャァァァーッ!!」」


「ちっ、こうなりゃプランBでいくしかねぇな……」


 プランAの魔法は不発で終わり、次は普通に戦うプランBに策を移行。不本意だが仕方なしと、鞘から刀を抜いて中段に構える。だがその直後……



「「グギャァァァーッ!?」」


「うおっ!? なんだ急に!?」


 前触れもなく、激しい痛みを訴えるハルク共。

 ある者は両手で股間を押さえ、またある者は蹲って腰を叩き、更には全員の胸が膨らみ出す始末。

 そんな滑稽すぎる光景を見て、あることに気づき、笑いよりも喜びが溢れ出る。


「……よっ、よっしゃぁぁぁーっ!! やっぱ成功してたぁぁぁーっ!!」


 刀を握ったまま両手を挙げて叫ぶ俺。要は、それくらい嬉しかったってこと。

 でも不意にキュピィちゃんを見たら、何がなんだか分からないって顔してた。

 だから、全部片づけた後に説明することにしたんだ。真のチカラってやつをさ。

 

「そんじゃあ、キュピィちゃんはそっちの2匹を頼む。俺はこっちの奴らやっからさ」


「は〜い、分かりましたぁ。ではぁ、早速ヤっちゃいますねぇ」


 待ってましたと言わんばかりに初動が早いキュピィちゃん。当然の如く無音で近づき、手慣れた様子で1匹目の頸動脈を斬る。そして、流れるような動きで2匹目の頸動脈もスパッと。


 つい魅入ってた俺は、頸動脈を狙うのは無理だと考えて心臓を狙うことにした……が、たとえ魔物でも無抵抗の相手をるのは流石に気が引けてしまい……



「……くっ、あとは突き刺すだけなのに……でも……」


 ハルクの左胸に刀の切っ先が触れる。

 しかし、それより下へは行かせられず、左腕の震えが刀に伝わって切っ先まで震えだしてしまう。すると……



「えいやっ!!」


 突如、その掛け声と共に「ゴォンッ!」と鈍い打撃音が鳴り響く。

 咄嗟に声と音がした方を向くと、そこには金星鎚矛モーニングスターでホブゴブリンの頭をかち割ったアーネちゃんの姿が。

 ホブゴブリンの顔は見事なまでに地面にめり込み、まるで漫画のような光景に思わず吹き出しそうになった。

 でもそれだけじゃなく、さっきまで震えてた左腕も止まったんだ。きっと、アーネちゃんがホブゴブリンを倒したのを見て、俺もやれるはず! って思えたから。そう感じてたら、いつの間にかハルクの左胸を刀が貫通してたよ。綺麗なほど真っ直ぐに。


「ふふっ、どうやら震えは止まったようですね? ……それではあと1匹も私がーー」


「ーータンマっ! その前にどうしても確認したいことがあってさ……だから、少しだけ待ってくれ」


「……え? は、はい。分かりました……?」


 今更何を? って表情を見せるアーネちゃん。まぁ、普通はそういう顔するよな。

 で、さっきの「どうしても確認したいこと」なんだけど……それはズバリ、コイツらに名付けをしたヤツは誰だってこと。ハルクを窃視鑑定ノゾキミした時は、それを意識してないから視えなかった……だから、今度は意識して視るつもり。あとさ、もう2つほど気になることがあるからついでにね。


「痛がってるとこわりぃけど視せてもらうぜ! ショルダーハック!」



【ホルク:ホブゴブリン〔ゴブリン種〕・オス・3歳・性欲値3250セクロス・経験回数55回・妊娠回数0回・称号『フェザー級?』『十人斬り』『早撃ち名人』『なんちゃってSP』『避妊男(new!)』】


【《F+》:HP『F』MP『F』STR『E』VIT『E』AGI『H』INT『F』MID『F』DEX『E』】


避妊男ヒニオ:避妊魔法による一時的な不名誉。全ステータス1ランクダウン。睾丸痛、短小化、豊胸化等とは無関係。オス限定。】


【《○+》:ステータスアベレージ。8種あるステータスの平均値。闘級に直結するもの。名付けをされると『+』が付き、全ステータス3割増。】


【ホルク:ホブゴブリン。名親『アユム=ソトミチ』】



 ……なるほど、避妊男の称号に全ステータス3割増か……それと名親は、アユム=ソトミチ……アユム……あゆむ……はっ! まさか転生者っ!?


 この時は驚きすぎて、つい声に出してたみたい。「アユム=ソトミチ、転生者かも知れない男……」ってね。そしたら急に優男が立ち上がって口出ししてきやがった。


「ーーなっ、何故お前があの方の名を!? それに性別までーー!?」


 この動揺の仕方は尋常じゃねぇ……てか、アユム=ソトミチが例の『あの方』ってやつなのかよ。なんか簡単に名前バレしちゃってるしwwこうなりゃ優男にはもっとバラしてもらわねぇとなぁ。くひひっ……


 てな感じで怪しい顔しちゃったけど、どうやらバレてない様子。つーか、なんか顔色が悪くなってね? まぁ、距離があるから気のせいかもしれんけど。


 ……なんて優男に対して適当な反応でいたら、とうとう激痛に耐え兼ねたホルクが「グギャギャァァァーッ!?」っていきなり叫び出した。そしたら……



「キャッ!? ……だーかーらーっ!! 急に大声を出さないでって言ってるでしょ!!」


 言葉遣いが荒くなったうえに、まだOKを出してないのに金星鎚矛モーニングスターをホルクの頭に落としてしまうアーネちゃん。前の1匹よりも地面にめり込ませてるし、余程ビックリさせられてムカついたんだろうな……うん、今この瞬間からビックリさせないように気をつけよ……


 なんだかんだ5匹のホブゴブリンを余裕で倒し、残すは呑んだくれのゲス野郎3人組だけとなった。そして、これからがクライマックスの始まりとなる。


「やーっとぶん殴れるぜ!」


 指の関節を鳴らすフリをしながら歩を進める俺。今まで鳴らしたことがないからやり方は知らん。


 そんな俺の後をキュピィちゃんとアーネちゃんが続き、肝心のペコラちゃんは……尻目で覗いたけど、まだ立ち直れなそう。


 まぁでも、その方が都合は良いかもな。幾ら裏切られたといっても仲間だったことには変わりねぇし。それに、もし目の前でアイツらがぶん殴られたらきっと心を痛めるはずだ。だって、見た目と違って脆く繊細で優しい心の持ち主だからな、ペコラちゃんって。


 ーーという具合に、いつの間にか彼女のことを考えてたよ。多分、自分が思ってる以上に好きなんだと思う。だから……俺の好きな人を泣かせたアイツらのことはぜってぇ許さねぇ!


「テメェら! 覚悟しやがれ!」


 悪役みたいな台詞を吐き、優男の元へ一直線に駆け出すと、武器を構えて迎撃態勢に入る優男達。


 くっ、流石はペコラちゃんの元仲間、強キャラ感を漂わせてやがる……! けどな、それでも俺達が勝つ! 何故なら、俺にはこれがあるからだ!


「丸裸にしてやらぁ! ショルダーハック!」



【シオン=キャラメイル:ヒューム〔人族〕・オス・18歳・剣士・性欲値400セクロス・経験回数136回・妊娠回数0回・称号『ライト級』『Eランカー』『ヤ○チン』『百人斬り』『早撃ち名人』『ゲス野郎(new!)』】


【《D+》:HP『C』MP『E』STR『D』VIT『D』AGI『C』INT『E』MID『E』DEX『C』】


【装備:鋼片手剣スティールショートソード鉄軽鎧アイアンライトアーマー・金の腕輪】


【MAGーー】

【COS『剣術2』『暗視2』『気配察知2』『護身術2』『見切り1』】

【UCS『斬撃忙殺スラッシュラッシュ』】

【RES『酒精アルコール耐性1』】



【キシリト=オルガム:ヒューム〔人族〕・オス・18歳・邪神官・性欲値530セクロス・経験回数33回・妊娠回数0回・称号『ライト級』『Eランカー』『十人斬り』『性職者』『神に見放されし者』『ゲス野郎(new!)』】


【《D+》:HP『E』MP『C』STR『E』VIT『F』AGI『D』INT『C』MID『B』DEX『D』】


【装備:鉄鎚矛アイアンメイス・薄灰の神官服・騎乗大全Vol.1】


【MAG『治癒』『結界』】

【COS『暗視2』『気配察知1』『護身術1』】

【UCS『祝福(使用不可)』『呪詛』】

【RES『呪い耐性1』】


【治癒『イヤッセ』『ナオッセ』】

【結界『シルド』】



【サグマ=トロップス:ヒューム〔人族〕・オス・18歳・戦士・性欲値430セクロス・経験回数25回・妊娠回数0回・称号『ライト級』『Eランカー』『十人斬り』『素人DT』『ゲス野郎(new!)』】


【《D+》:HP『B』MP『F』STR『B』VIT『C』AGI『E』INT『F』MID『E』DEX『C』】


【装備:鋼戦斧スティールバトルアックス鉄鎧アイアンアーマー・銀の腕輪】


【MAGーー】

【COS『斧術2』『暗視2』『気配察知1』『護身術2』】

【UCS『力的粉砕パワースマッシュ』】

【RES『酒精アルコール耐性2』】



 ……へぇ、ステータスはホブゴブリンと同じくらいだけど魔法やスキル、それに装備も良くなってるから油断はできねぇな。

 とりま、対峙までもうちょいだし、俺達の方から仕掛けて主導権を握るつもりだ。このまま勢いに乗ってさ。


「2人とも、こっちから攻めるぞ! やり方は好きにしていいからよろしく! あっ、ホークは後ろで待機しててくれ!」


「うふふぅ、それは楽しみですねぇ」


「わ、分かりました……やってみます!」


「ニュッ!」


 戦いの熱量が増すなか、アイツらとの対峙まであと僅か……

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魔物にはもう孕まされん! 〜神様から貰った『避妊魔法』とかを駆使して、俺は英雄になってヤる!〜 るっち @Rucchi_108

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