第12話 もう一つの街

街の門を抜け、こころは地図を見ながらリユウと森の中を歩き続ける。

 川の飛び石を歩いたり吊り橋を渡ったり、たまに休憩をしてオヤツを食べたりしてレアリナ城へと進んでいく。

 リユウは木の枝を持ち、鼻歌をうたいながら気持ち良さそうにこころの斜め右後ろを歩く。

 「あれ?さっきもここを通ったような……」

 「ココ姉どーしたの?」

 「あー、こりゃ完全に迷ったぞ。リユウを不安がらせるわけにもいかないしな……」

 不安になったこころが心中思う。

 「ココ姉?・・・」

 「ん!?なんでもないぞ!先に進もうか!よーし!次は左だー!」


 【この先行き止まり魔物注意】


 「完全にやばい……」

 こころは白目を剥き口は半開き。

 「はー、、、行けないね……」

 リユウは普通に言う。

 「あれ?でも地図ちゃんとみて……反対?でもあの時、確に街を後ろに矢印は前に指していたぞ!なんで?え!どうして!なにがあった?もしかして、多分あの時か?」

 リユウはこころの側で蝶々を追いかける。

 こころは道中の違和感を思い出す。

 休憩していた時にリユウの手が地図に触れいた。

 その後こころが地図を持つと結構熱くなっていた。日差しに当たるような場所でもなかったがそれ程気にしてはいなかった……。

 「リユウて魔法とかは使えるの?」

 リユウは蝶々が耳先に乗っている状態でこころを見上げて言う。

 「魔法は少しだけ。結界と掌で数分物や文字を押さえつけていると左右反対にできる魔法とか!」

 「やっぱり……。結界はすごい。だけどなんだその魔法……」

 こころはガクリとした感じで心中思う。

 「リユウ、じゃこの地図左右反対にしてくれるか?」

 「うん!わかった!」

 リユウは自分が原因だと気はづいていない。

 こころはリユウが悲しむ顔を見たくはなかった為黙っていた。

 そしてリユウは掌で地図を押さえた。

  こころは辿って来た道なら左目を使い戻ることができる。

 「転移使うか……。メラスタイーズ!」

 休憩した場所まで戻り、元に戻った地図を見ながらこころとリユウはまた歩きだす。

 「この先かぁ、、、。レアリナ城もう見えても変じゃないぞ……。」

 「ココ姉!!!!」

 「どうした!?リユウ!」

 ココロが振り向くとリユウはこちらを見ながら透明な何者かに引っ張られていくように物凄い勢いで攫われる。

 「っま余裕だろ!」

 ココロは左目を青く光らせシュビルナースレイブを出し見えない敵の方へ目を集中させ、自分の身体をミサイルのように飛ばし一瞬にして追い抜かした。

 そして、リユウを奪い取り抱き抱えシュビルナースレイブで一刺し。

 「リユウ大丈夫か?」

 「リユウ助けてくれるの信じてたから大丈夫だよ」

 リユウは内心怖かったが一安心しニコリとした。

 「ちゃんと見ていなかったから悪かった!ごめんごめん、ヨシヨシ!」

 こころはリユウを撫でる。

 「さて、どうするか、、、」

 草が人の形で潰れていて、倒れ込んでいるのがわかる。

 すると剣士の姿をした人間が浮かび上がって来た。

 「こいつ人間か?勢いに任せたから死んじゃったぞ……。このままにするのも少し気の毒だし、何かわかるかも知れないから話でも聞くか」

 リユウは剣士の鎧にツンツンしていた。

 するとココロは左目の魔力で死に戻りを使う。

 傷を覆った所に手を当て目を閉じる。

 「レークティオナーズ……」


 《レークティオナーズ》

 魔力魔法:死者の蘇生 

 同じ者に5回は使えるが6回目は無効。


 「……ん、俺生きて、おっおい!お前らさっきの!!」

 剣士は甦り警戒する。


 「っあ!甦った……ったく!うちのかわい子ちゃん誘拐しやがって!」

 こころは剣士の顔を覗き込むようにして言う。


 「うるさい!だまれ!これも仕事だ!」


 「はぁ、、、何が仕事だよ。すぐ僕に殺されたくせに!そんな重そうな鎧まで装備しちゃってさ!アハハハハ!放っていくつもりだったが感謝しろよ!」


 また剣士が喋る。

 「ちょっと油断しただけだ!そ、それにお前俺の姿が見えていたのか?」


 「いや、見えとらん!」

 こころは腕を組みそう言う。


 「ならなぜら俺を捉えることができた!?」

 「簡単だろ!リユウが連れ去られる姿を追えば後は大体の要素は見えるだろう……。後、リユウのお腹あたりに手形が見えたからなぁ」

 そして剣士は呆気なさそうな顔をしていた。


「っで、お前は何者なんだ?」

 ココロが問う。

「俺はレアリナ城のレアリナ様に使える城の剣士、ユウギだ」


 《ユウギ・アルトレイ》

 種族:人間 

 インキュバシタンボルグ生まれ。

 レアリナ城を守る剣士

 要素 身長176cm 地球で言う24歳辺り。

 仲間意識は強く剣士としての信頼も高い。

 魔王軍との戦い経験 ゼロ


 「おーーー!レアリナに会えるのか!どこだ!城は!どこにあるんだ!?」


 「おーーお前!レアリナ様と呼べ!と言うかレアリナ様には滅多に会えないと言うか、、、お姿を見たものは実際に神に近い存在の者しかいないんだよ」

 「ふーん、でも会うぞ!渡さなきゃ行けないものがあるんだ!」

 「はーぁあ!?無理無理無理無理!ただでさえ八階扉にも行く事が許されていないのにどう会おっていうんだよ!」

 「八階扉ってなんだ?」

 「八階扉は城の最上階の二つ下の階で、強い聖力で作られた結界だけの階だ。そして九階扉は噂ではなんか、よくわからんが地球と言う星にあるものが置かれていたりするらしい。多分やばい系の武器とかなんかあるんじゃないか?」

 「地球は僕がいた下界の事だ!」

 「え!?マジかよ!デタラメか?」

 「見せてやる!」

 そうココロが言うと左目がプロジェクターみたいに光を放ち中に映像を映した。

 「これが地球……。美しい星だ」

 映像が道に変わり車が目の前を突っ切る。

 「おー!なんだ!敵か!うわぁ!!」

 「アハハハハ!車だよ!」

 「殺されるかと思った……」

 「自動車っていって、これに乗っていろんな所を行き来するんだぞ!僕は下界のお母さんが運転する横で一緒に乗ってたんだ!窓を開けると涼しい風に広い景色が動いてみえるんだぞ!」

 「地球は恐ろしいのか……」

 「楽しいこともあるが悲しいこともある!それはこの星でも同じさ!人を殺めるやつらだっているし

それを阻止しようとする組織もある!生きていくってそんなもんだろう!僕はそんなのは好きじゃないけど」

 「なるほど、、、お前が恐ろしいよ!っあで!そして十階扉!その十階扉は目には見えないらしい。入れる者はそれ程の理由か何かないと入れないとの噂だ!神でさえ無理と言われているくらいな」

 「っで、レアリナ城は?」

 「だから会えないって……」

 「だから渡さなきゃ行けないものがあるの!」

 「お前話聞いていたのか!?」

 「聞いていた上で言ってるんだ!」

 リユウは笑った。

 「しかたねぇ、普段は結界を使い城はただの森にしか見えんから誰も気付けないし、触れられないんだ、ただ数十年まえに魔王となにか取引していたみたいでその時は結界を一時消していたらしいんだ」


 「あの時フォードが城を確認出来たのはそれが原因だったのかぁ。数字的にも都合が合う」

 こころはそう頭に浮かべた。


 「っで、お前さん名前は?」

 「ココロ!そして!変態ユウギがロリコンであったが為に我慢の限界から拐ってしまったちょー可愛い獣人の娘はリユウ!」

 「変態扱いすんじゃねーよ!てか仕事と言っただろ!それにリユウちゃんごめんな」

 「いえ、大丈夫です」

 リユウは人見知りがあるため恥ずかしそうにしていた。

 こころは疑問に思った事を口にする。

 「そういえば、城を結界で隠しているならなぜリユウを連れ去ろうとしたんだ?」

 「前から命令が出されていて、獣人を見たら城へ連れてこいと言われていたんだ。理由は多分、焼かれた獣人の村の生残りを捕獲し保護すると言う事なんだろう」 

 「なるほど……。にしても捕獲のやり方が雑すぎだよ。あんなやり方してたらさっきみたいに殺されても可笑しくはないぞ」

 「いや、なんかそう言うのよくわかんなくてつい、、、。それに捕獲した者には懸賞金がでることになっていてな、、、。まぁこんな形じゃ貰えないが」

 「貰えばいいじゃないか!」

 「はぁ?殺されて獣人の仲間に甦させられて今に至るなんて説明したら、リユウちゃんを連れて行ったとしても貰えないだろう!」

 「だからリユウを見つけたことには変わりないし、結局城にリユウが行けば問題ないだろ!ただリユウを城で保護するっていうのはリユウにとって幸せなことなのか、それは確認してから決めさせてもらう!」

 「マジかよ!いいやつなんだな!俺より余裕で強いが……」

 「リユウ、ココ姉と一緒がいい!」

 リユウはこころにギュッとしがみ付き、不安そうに言う。

 「わかってるよ。リユウは渡さないから大丈夫」

 「うん!ずっと一緒!」

 こころはそう言ってリユウを撫でると安心した顔を見せた。

 「よし!じゃ城へ向かおう!」

 そう言いこころは歩き出した。

 「おい!まて城はもうこの場所だ!」

 ユウギがそう言うと、こころとリユウに紫色をした結晶を持たせた。

 「これはなんだ!?」

 こころが言う。

 リユウは興味深々に石を触りたがろうとしている。

 ユウギが石について語り始めた。

 「これは次元をつなぐ結晶。ディメンタルスという石だ。城に使いしている者にしか渡されていない貴重な石なんだ!」


  《ディメンタルス》

 次元つを繋ぐことができる結晶

 使い方は手でギュッと握りしめていると次元移動が可能。

 完全に次元移動が終了すれば結晶内でキラキラ蠢いているものも消える。

 ユウギは左手に結晶を持ち、右手でこころの手を握ろうとした……。

 「何触ろうとしてんだ!変態剣士!」

 こころがユウギの手を払う。

 「レアリナ城に行きたくねーのかよ!」

 「行きたい!」

 こころは両手をグーにして腰に当て言う。

 「一人が結晶を持っていれば後の二人は俺と手を繋いでいるだけで次元を移動できるんだよ!ほら!」

 「なるほど!じゃ僕が持つ!それでリユウ→ユウギの順番でいいだろ!?」

 「どれだけ俺を警戒しているんだ……」

 するとリユウがユウギに近づき結晶を持ちたがる。

 「リユウが持ちたい!リユウがぎゅーしたい」

 「あ、、、この二人疲れる……。わかったやらせてあげるから落とすんじゃないぞ」

 「うんうん!」

 リユウはうなずく。

 そしてこころは気づいた。

 「っげ!リユウが持つってことはこの変態剣士と手を握らんとあかんのか……。やむおえん!足でも踏んづけていれば手も足も同じだろう……」

 ユウギはリユウに握る様命じ、結晶をギュッと握りしめた。

 「いったー!!!!おい!こころ!何をするんだ!」

 ユウギは叫ぶ。


 こころ「手も足も同じだろ!」

 ユウギ「痛いだろ!」

 こころ「男がグジグジ叫くな!」

 ユウギ「無理ゆうな!」


 二人が言い合いしているうちに森から真っ白な空間になり、薄々とあたり全体に霧が浮かび上がる。

 すると街の建物や塔が見え初めてきた。

 そして完全に霧がた経つとそこには、白く薄く青光る建物がたくさん建っていて、氷で作られたかのように見えるタイルの道、除けば鏡の様に姿が見える。

 「おい!なんだ!森なんて何処にもないじゃないか!これ、インキュバの街とは違う次元の街か!?」

 こころが見たレアリナ城を中心とした街は、転生し降り立ったインキュバの街並みの風景に似たまた別の街が現れたのだ。

 「そうさ!ここがレアリナ城でありレアリナ様が作られたもう一つの街インキュバシタンボルグアルウェウクさ」


 「そりゃあのインキュバで幻とされるわけだ」

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愛犬異世界転生〜飼い主待ちながら魔王攻略 @kenshiro1228

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