#62 僕は泣かずに最後に勝利する
クミちゃんのベッドの端に、僕を真ん中に3人並んで座った。
僕はそれぞれの手でクミちゃんとチョコちゃんの手を握って、二人に昨日見た夢の話を聞かせた。
チョコちゃんに僕以外の好きな人が出来て、チョコちゃんはその人のことを「お兄ちゃん」って呼んで、僕が話しかけても返事をしてくれなかったこと。
クミちゃんも僕以外の人と抱き合ってキスしておっぱいを揉ませて、僕がそれを見てると男の人が怒鳴ってて、クミちゃんは僕のこと見向きもしないで興味なさそうだったこと。
その後ヒナタさんが現れて、「この泣き虫クソ野郎! ゲロ臭いぞドーテーが! しょんべん漏らしてテメーはガキか!」って罵倒されて、意気地なしと責められたこと。
目が覚めてから、夢だと分かってるけど凄く怖くて気持ち悪くて、どうしても不安がぬぐえなくて、二人に会いたかったこと。
それらを、ゆっくり順番に話した。
二人の手を握っていたせいか、それとも先ほどの二人からの猛烈なキスのお陰か、会う前までに感じていた恐怖や不安は、大分治まっていた。
「コータくん・・・実は私とチョコちゃんも似たような夢を昨日の夜、見たの」
『・・・・え!? どどど、どゆこと!?』
「私がコータくんを裏切って、それで妊娠して、それでコータくんは居なくなって・・・」
「私もクミちゃんと同じです・・・・」
『えーっと・・・・つまり・・・3人とも同じタイミングで、僕が二人に裏切られる悪夢を見たと・・・?』
「うん、そういうことだね・・・・」
え、これ、マジでどういうこと?
何か見えない力とか働いちゃってる感じ?
う~~~ん・・・
僕が黙って思案していると、二人が不安そうに僕の顔を見つめていた。
そうだ。
いつも僕は情けなくて、弱気で、臆病で、意気地なしで
だから、二人とも不安なんだ。
今こそ僕がしっかりしないと
二人とも僕の事好きになってくれて
それで悩んで話し合って、二人とも僕の恋人になるって決意してくれて
なのに僕は未だにハッキリ答えを伝えられなくて
こんなんじゃダメだ
トラウマがなんだってんだ
二人に不安な顔、悲しい顔をさせてまで、何しょーもない過去に囚われてるんだ
よし!
いつものヤツだ!
いつもの様に確認の掛け声だ!
僕は泣かない!泣いたら負けだ!
僕はクミちゃんを好きだ!大好きだ! クミちゃんの恋人になるんだ!
僕はチョコちゃんを好きだ!大好きだ! チョコちゃんの恋人になるんだ!
よし!
僕は二人を守る! 二人の恋人になって二人の笑顔を守るんだ!
そしたら僕の勝ちだ!
大勝利だ!
よし!もう大丈夫!
僕は絶対に勝つ!
僕は二人の手を一旦離して立ち上がり、二人の前に片膝をついて座り直した。
クミちゃんとチョコちゃんの手を取り重ね合わせて、両手で包み込むように自分の手も重ね、顔を上げて二人の顔をしっかりと見つめた。
『クミちゃん、チョコちゃん、僕は二人の事が大好きです。 ずっとずっと二人と一緒に居たいです』
『二人に何かあれば命を懸けて僕が守ります。だからずっと傍に居させて下さい』
『僕を二人の恋人にして下さい』
噛まずにしっかりと言えた
「はい!喜んで!」
「ふぁい!恋人になりましゅ!」
二人は同時に返事をしてくれて、飛びつく様に僕に抱き着いた。
◇
結局、3人が見た夢については、「僕たち3人が、人と違う恋愛の道を選ぶのに、覚悟を試したんじゃないか?」という僕の考察で3人とも納得することになった。
それに、3人が同じタイミングで同じような夢を見たという事実に、僕たちはより強く運命というものを感じずにはいられなかった。
無事に恋人同士となったことで、さっきまでの不安や恐怖は三人とも綺麗になくなり、ひたすらイチャイチャしてその日は過ごした。
その日はそのままクミちゃんの家に僕もチョコちゃんも泊まることになった。
チョコちゃんの希望で、3人で一緒にお風呂にも入った。
寝る時は、クミちゃんのベッドに3人抱き合って一緒に寝た。
3人とも昨夜の悪夢のせいで寝不足で、バタンキューで直ぐ寝た。
翌日、朝起きて、おはようのキスを3人でし合って、顔を洗うために3人で洗面所に行って、鏡を見て思い出した。
『クミちゃんの罰ゲームのこと、忘れてた』
僕がそう言うと、クミちゃんから「チッ」って舌打ちが聞こえた。
『じゃぁ、今から罰ゲームの執行を始めようか』
「え!? 恋人にそんな酷いことるするつもりなの!」
『うん。僕はラノベのクソ主人公と違って、愛する恋人にも容赦はしないよ?』
『でも、だいじょうーぶ。僕もチョコちゃんも一緒に落書きされるから、ね?チョコちゃん?』
「え? エエエエエェェ!? そ、そんなぁ~」
クミちゃんには、サングラスと額に「G」の文字を描いた。
チョコちゃんには、眉毛をイシザキくんにアレンジした。
僕の顔には、国民的人気アニメの猫型ロボットが描かれ、首に丸い鈴が付けられた。
3人そのままの顔でクミちゃんママが用意してくれた朝食を食べて、その後クミちゃんの部屋に戻ってから顔を寄せ合い記念撮影をした。
沢山写メ撮って満足して、クミちゃんのメイク落としを借りて消そうとしたら、僕だけ油性マジックで描かれていたことが分かり、早くも3人の絆に亀裂が入ったとか入らなかったとか・・・・
第1部 完
失恋しても僕は泣かない。泣いたら負けだ。 バネ屋 @baneya0513
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