6 Do think
あぁ、全てが終わるんだ。そう思った。目の前に現れた彼に殺されて、私の短い人生は終わりを迎えるのだと、直感した。死を悟った。
しかし本能的に、だろうか。私は身体の芯から悲鳴を上げた。こんなに大きな声を出すことができるとは、自分でも知らなかった。何故か時が流れるのが遅くなって、脳がすっきりと冴えていて、私は次にすべきことを考えている。
にやりと笑う彼から逃げるためには、私はまだまだ走らなければならないだろう。またこうして先回りされることは目に見えている。ただの平均的な女子高校生である私なんかより、ずっと狡猾で体力もあるだろうこの男に勝てる可能性なんて、極めて低いものだ。考えなくたってわかる。
けれど、私はそのひとつまみの可能性に賭けなくちゃならない。死ぬのは嫌だ。彼に殺されるのだとしても、それまではできる限りの抵抗をしていたい。それが無駄だとしても、彼を楽しませることになるとしても、それでも私は精一杯逃げなくちゃならない。
ケタケタと笑う彼の足を素早く払い、それから転ぶのは確認しないで後ろに走る。背後にドサッと人の倒れる音を聞いて、それから彼の悪態が背中を刺す。
正直に言ってしまえば、怖い。今だって手は震えている。きっとあのまま逃げることをしないで殺されてしまえば、こんな感情にはならなかった。安楽を手に入れられていただろう。しかしそれは、本当に安らかなものなのか。きっと私は死んでもなお後悔するだろう。
家への道を逆走する形になるが、少しでも可能性を考える。彼から逃げ切ることのできる可能性を。
振り返る→9へ『Catch and run』
https://kakuyomu.jp/works/16816700426841578850/episodes/16816700426843442779
止まらない→11へ『Find a house』
https://kakuyomu.jp/works/16816700426841578850/episodes/16816700426844033636
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