俺達の世界

最終話 幸せは常に隣に

「そっか。結局.....君は居場所を見つけたんだね」


俺達は挨拶回りをしていた。

誰にかと言えば俺の知り合いに次々に、だ。

その中で真里さんの所にやって来る。

ゲームショップに相変わらず勤めているのだが.....会うのが不安だった。


何故かと言えば.....俺が佐藤と付き合う事が無かったから、だ。

真里さんはどう思うのだろう。

考えながら俺は恋人の雫と一緒にやって来た。

それから俺は、はい、と真里さんを見る。


「.....でも君の幸せを一番に願っていたからね。私は。誰と付き合うのも君の自由だから。.....だから全く問題無いよ。蕾ちゃんは何とかするから。励ますから」


「.....はい。感謝します」


「私からもお願いします」


そんな感じで告げると真里さんは、うんうん、と頷きながらひっそりエロい本を勧めてきた.....オイ!?

雫も真っ赤に赤くなっているから!?

真里さんはニヤニヤする。


「.....是非ともうちを宜しく。子供を作る時は特に♡」


「早いわ!!!!!」


「か、一馬君.....でも何時かは.....」


「雫!お前まで!」


俺は苦笑い。

そんな感じの雰囲気に爆笑する真里さん。

他の客など気にしないで、だ。

俺は.....本当に額に手を添えざるを得なかった。

全くな、と思いつつ。


「でも本当に良かった。君が.....もう大丈夫って事を知れて」


「.....俺も.....良かったです。真里さんに殺されるかと思いました」


「あらあら。そんな事しないわ♡」


「嘘ですね」


「あらぁ。酷い」


真里さんはニヤッとする。

それから俺達は顔を合わせながら、じゃあ真里さん。お仕事の邪魔になりますから、と切り上げて帰ろうとした。

すると真里さんが、ちょっと待つんだ、と手で静止してくる。


「お祝いにゲームをプレゼントしよう」


「.....え?ゲーム?」


「そうだ。ゲームだよ」


「.....エッチなゲームですか?」


「違う。良いかい。何でもかんでもエッチと決めつけるのは良くない」


真里さんがそんな感じだからな。

俺は顔を引き攣らせて見る。

すると何か懐かしいゲームソフトの入った紙袋を持って来た。

中古品で悪いけどね、と言いながら。

そしてそれを渡してくる。


「な。こんなに.....」


「良いから良いから。受け取って。ニンデドウだからね。これなら良いでしょ?」


「でもこれって.....高いんじゃ.....」


「良いから良いから。私のバイト代から天引きだけどね」


でもそれ以上に私は嬉しかったから。

君が幸せになった事がね、と満面の笑顔を浮かべる。

俺は見開きながら、ですか、と柔和な顔で答える。

それから頭を下げる俺と雫。


「有難う御座います」


「気にしない気にしない。アッハッハ」


プレゼントだから気にしない。

と満面の笑顔のまま俺の背中をバンバン叩いてくる.....痛い。

だけど痛みは嬉しさに感じる。

考えながら俺は苦笑いを浮かべてから。

そのまま真里さんを見た。


「真里さん」


「.....何かね?」


「.....本当に有難う御座います」


「感謝はこっちのセリフだよ。.....君が色々を見せてくれた。それだけで生きていく価値が生まれたんだ」


「....ですか」


「.....うん。私は.....君を応援しているからね」


それから俺達はそんな会話をしながら。

挨拶回りの続きをする為にそのゲーム屋を後にした。

何時までも.....真里さんは手を振っている。

俺は横に居る雫を見る。

雫は紙袋を胸に抱えて嬉しそうな笑顔を浮かべる。


「良かったな。雫」


「.....私達って本当に幸せだね。一馬君」


「そうだな。.....幸せだと思う。.....それを乗り越えてまた幸せになるんだろうから」


「.....だね。.....ウフフ」


「.....なあ。雫」


「.....何?一馬君」


俺の事はどれだけ好きなのか、と聞くと。

うん。それだったら宇宙一好き、と即答した。

その言葉に俺は、そ。そうか、と反応する。

少しだけ恥ずかしい感じだな。

俺は頬をガリガリと掻く。


「.....俺も宇宙一幸せ者だ。こんな人に愛されて」


「.....そう?.....嬉しい」


「.....だな」


そんな感じで俺達は笑みを浮かべて歩いて行く。

和也にも双葉にも告げた。

付き合い始めた事を。


お互いに手を繋ぎ歩み出して行く。

それから.....季節が移り変わった。

俺達は高校3年生になり.....世界は時が経ち。

結婚式の日を迎えた。



「.....よ。新郎。大丈夫か?」


「まあ多少は緊張するよな。お前とカリオスさんの結婚式とは違うしな」


「そりゃ当たり前だ。.....って事でまあ先に行くぜ相棒」


和也は相変わらずな感じで手をヒラヒラさせて歩いて去って行く。

あの野郎.....身長が190センチ近くになってしまったな。

全く、と思いながら。


7年後。

俺は雫と結婚する事になった。

何というか俺も身長が伸びたが180で止まった。

ふざけんな、という感じだが.....、と思っていると係の人が来る。


「新郎様。お着替えやご準備の方に入ります」


「.....はい」


そして係の女性が俺を案内してくれる。

俺は空を見上げる。

今日は晴天だな、と思える様な.....晴れ晴れとした空だ。

まるで俺達を迎えている様な。

そんな感じの。


「.....さて」


それから俺は室内に入る。

そして準備を始めた。

その際に.....メールが一通入って来る。

それは.....美里の両親からだった。



「.....どうしたんですか?先程より嬉しそうですね。新郎様」


「長年の肩の荷物がほぐれた感じですからね」


「.....?.....そうなのですね。それではご準備は宜しいでしょうか」


「.....はい」


そしてドアが開く。

結婚式場では.....拍手で迎えてくれた。

双葉と付き合い始めた大輝君。

和也とカリオスさん、そして美里。

それからパパさんやら親族と。

蕾と芽久と。

数多くの人達に、だ。


そして目の前に.....彼女が純白のドレスを着ていた。

レースのドレスを、だ。

あの頃を思い出すが.....その頃以上に綺麗になっている。

俺を見て紅潮している。


「.....綺麗なものですね」


「そうだな。あのアホにあんな綺麗なのは全く相応しくない」


聞こえているぞコラ。

俺は苦笑いを浮かべながらそのまま歩を進める。

そして一歩一歩ずつ前に進んだ。

それから.....見上げる。

今日という日をどう描いたら良いのだろうか、と思いつつ。


「それでは。婚約の.....」


その様に神父が読み上げる中。

俺は雫をチラ見して見た。

雫は紅潮したまま俺をチラッと見る。

お互いに同じもんだな、と思える。


そう言えばさっき肩の荷が降りたって言ったけど。

あれは何の事だったかというと(今日という日がなんと素晴らしいものでしょう。娘も.....そう思っている筈です。.....天国からきっと、です。.....もう全部を重く考えないで下さい。そんなに想ってくれてただただ今は感謝しかありません。本当に有難う)と書かれていた。

少しだけ肩の荷が降りた感じはそれの事を言っていたのだ。


「.....一馬さん?.....その.....指輪の交換」


「.....あ。す、すまん!」


ボーッとしていた俺。

慌てて俺は首を振りながらそのままヴェールを剥いてキスをした。

で。


周りも神父も愕然としていた。

何故かといえば行う筈の行為の順番が違うから、だ。

俺は赤面する。

そして俺は頭を掻きながら周りを見渡してから雫を見る。


「.....ま、間違えた.....」


「.....もう。一馬さんったら」


だがその事で今度は雫が俺の唇にキスしてきた。

額に手を添えて、アホめ、と呟く和也の一言を皮切りに。

全てが、ワハハ、とどっと笑いに包まれた。

俺は盛大にやらかした事に溜息を吐く。


でもこれで良かったんだよな。

これが.....きっと俺達らしい。

そう.....横の雫を見て思わざるを.....得なかった。

微笑んでいる雫を、だ。

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俺の体操服を嗅いでいるとんでもない美少女に遭遇してしまったのだが アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

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