空底

いつも、脳の中心には憂鬱が巣食っていたように思う。
完璧ではないけれど平和な人生の中で、友人と彼女に囲まれて生きる「僕」は、ある日突然アパートから飛び降りた。
脈絡のない自殺未遂だった。思い出されるのは幼い頃に海で聴いた、奇妙な音――。

自分より下に落ちたものは、世界での優先順位も下がったようでせいせいする。
海と空の間で藻掻いた、平凡な人間の話。