メイド長とはいったいなんなのだろうか

バブみ道日丿宮組

お題:昼のセリフ 制限時間:15分

メイド長とはいったいなんなのだろうか

「よく寝た」

 ベッドから起き上がった少女がぽつりと言葉を漏らす。

「ここはどこだい?」

 周りをキョロキョロして、

「君は誰だい?」

 家主であろう青年に首を傾げる。

「佐藤だよ。甘い砂糖ではないよ」

 冗談交じりの言葉。

「佐藤さんがどうしてここにいるんだい? そしてここはどこだい?」

 少女の見慣れない部屋。そして匂い。

「歩いてたら、急に倒れたから連れ帰ってみたんだ」

 青年が訳を話す。

「それってつまり誘拐ってことかい? それにしては待遇が良い気がするが……?」

 少女は手錠がないか、首を締め付けてないか、足を鎖で拘束されてないかを順に確認し、再度青年の顔を見る。

 顔は標準的な顔つきで、体つきはまぁまぁ。一般男性というべきもの人が少女を見つめてた。どうみても犯罪をする人にはとても見えなかった。

「私を身代金目当てに誘拐したのだとすれば、間違ってない」

 だからこそか、少女はえへんと胸を張る。

「こうみえても、名探偵だからね。支払えるお金はたくさんある」

 名探偵。そう、少女は名探偵だったのだ

「本人に身代金を要求ってあんまない気がするよ」

 あくまでも善意でここにつれてきたと青年は主張する。

「表立ってないだけで、結構世の中には存在するよ」

 いくつかの例を少女は説明する。

 その中には青年が聞いたことがある事件も含まれてた。

「それでその名探偵様を僕は知らないのだけど、本当に名探偵なの?」

「真の名探偵は表にでないものさ。インカムで基本は爺やが事件を解決してる」

 ちょっと貸してみてと、少女は青年が持ってたスマホを借りて、検索を開始する。

「これだ。ほら、名前がちゃんとニュースに出てるだろ?」

 そこには難事件としてた事件を解決したと記事に書かれてた。

「爺やだ。君も見たことあるんじゃないか?」

 青年は見たことはなかった。ただ、名前は大学で聞いたことがあった。

 ぐぅというお腹の音。

「申し訳ないが、なにか食べ物を出してくれないか。お金はこの通り払う」

 少女はベッドの脇に置いてあったかばんから、財布を取り出し、万札を彼に渡そうとする。

「そこまで高くないし、別にタダでいいよ」

 青年の言葉になぜか少女はしょぼーんとした。

「……そういうなら、そういうことにしておこう。あっ、じゃぁこちらを代わりに渡しておこう」

 がさごそと少女はカバンの中をあさり、名刺ケースを取り出す。

「何かあったら、連絡をしてくれ。無料で解決しよう」

 青年は名刺を渡され、それを見つめる。

 そこには少女の名前と思われるものと、職業が書かれてた。

 メイド長、アリスと。

「メイドなの?」

「あくまでも仮の姿さ」

 

 これが青年と少女の始まりの物語。そして長い旅の序章でもあった。

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メイド長とはいったいなんなのだろうか バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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