第60話

必死に逃げ出そうとするが、逃げ場所なんてどこにもない。



次の瞬間、目の前に女子生徒の足が見えた。



ノドカかと思い、ゆっくりと顔をあげる。



しかし、そこに立っていたのはノドカではなく、吉田さんだったのだ。



青白い顔の吉田さんがあたしを睨みつけている。



「ヒィッ!!」



とっさに体の向きを変えて逃げようとする。



しかし、すでに消えてしまった両足を必死に動かしてみても、上手く進むことができなかった。



「ようこそ、七不思議の世界へ」



吉田さんはあたしに顔を近づけて言う。



「な、何言ってんの!」



そう答えた瞬間、ノドカとコウダイくんがいないことに気がついた。



ついさっきまでと同じ場所にいるのに、全体的にモヤがかかっているようで雰囲気が全く違う。



「なにこれ……どうなってんの……?」



遠くから聞こえてきていたはずの車の音も、近所の犬の鳴き声も、なに一つ聞こえてこない。



吉田さんに助けを求めようとして振り向いた時だった。



今まで何もなかった場所に人影が現れた。



「あ……あ……嘘でしょう……?」



そこにいたのはトイレに出現させた少女で。



音楽室に出現させた手だけの霊で。



プールの男の子で……。



あたしが出現させた霊たちが、手招きをしているのだ。



「イヤアアアア!!」



アプリで作られた悪霊によってとり殺されたあたしの行先は、アプリの中だった……。


☆☆☆


A組の教室内では担任の先生が深刻な表情を浮かべていた。



「昨日の夜から飯田さんが行方不明になりました。なにか知っていることがある人は、先生に連絡してきてください」




END

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

具現化アプリ 西羽咲 花月 @katsuki03

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ