繰り返されたその世界の果て
よしの(旧ヒナミトオリ)
最後のデェト
君は私を殺せない。何度世界が繰り返したとしても。その言葉で彼は思い出した。
世界が崩壊と再生を繰り返していることを。その原因は彼女であることを。彼は彼女をその手で殺める覚悟をする。
決行日はデートの日。初めてのデートの場所、初めてのデートと同じプラン。水族館で無邪気に魚を見る彼女は愛おしかった。懐かしいね。あの時はこうだったよね。と思い出話に花を咲かせ、彼女は笑う。別れ話でもし始めるの?と笑う。彼は言う。君を殺すんだ。そっかと彼女はうつむく。君になら、いいかなぁと声がした。
顔をあげた彼女は涙をこぼしていた。思い出しちゃったの?と泣いた。彼は愛しい人の手を取る。僕のために世界を殺してくれてありがとう。お疲れ様。もう、休んでいいよ。そう告げる。そっかもう、いいんだね。そんなに君は強くなってたんだね。でも、君は強くなっても、きっと何もなしえない。だから私は君が好きだ。もし、世界を壊せるスイッチが手のひらにあれば、きみは何度も押そうとしては、押せない善人だ。
彼女は彼の拳銃を奪う。だからね、君は私を殺せない。
もしも、どうせこの手からすべて滑り落ちるのだとしたら、すべてを自分の手で壊してしまいたい。というのが彼女の行動方針だった。しかし、それを崩したのは彼一人。滑り落ちる彼を壊すことができず、掬うことも、救うこともできなくて、自分の手にないものすべてに当たっていた。
やめなければならないことに気が付いていた。この行為に果てはなく、ただ永遠を歩きさまようしか道はないと知っていた。だから、止めて欲しかった。
ほかならぬ、彼に。
ああ、君にもなしえたことがあった。この私を救ったのだ。誇りに思ってくれ。そう、彼を
繰り返されたその世界の果て よしの(旧ヒナミトオリ) @hinami_street
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