後日談
私_佐鳥葵には、今1つの悩みがある。
ずっと片想いしていた幼馴染_古橋茉奈と恋人になれた。そこまでは良い。
結ばれた瞬間は本当に嬉しかったし、今まで生きてきてよかったと思った。
…だけど。
彼女と過ごす日々は、心臓に悪すぎるのだ!!!
■■■
日曜日の昼。今日は私の部屋でお家デート。
実家暮らしだけれど、親は用事でいないので二人っきりだ。
…私、心臓もつかな。
ピンポーンとインターフォンが鳴ったので、パタパタと階段を降りる。
「いらっしゃい、茉奈」
「お邪魔しまーす!」
ドアを開けた茉奈が、ふと私をじっと見て言った。
「…あれ?葵…」
ほら、くる。いつものアレが。
「今日もめっちゃ可愛いね!そのルームウェア初めて見たけどすごく似合ってる!」
「あ、ありがと…」
「リップも新しいよね?可愛い〜!」
「わ、わかったから早く入って」
「あ、ごめん!」
ふぅ、と私は茉奈にバレない位の大きさで息を吐いた。
とりあえず最初は乗り切った。
…お分かり頂けただろうか。
私の恋人は、私に「可愛い」と言い過ぎなのである!!
■■■
私の部屋でまったりと、二人で雑誌を読む。
背中をベッドにもたれ、二人並んで床に座る。いつもの定位置だ。
「ねーえー、葵ー」
「何」
「これ良くない?葵に似合うよ」
茉奈が、雑誌に載っているワンピースを指さして言った。
こうして並んで座っていると、茉奈の肩が自然と私の肩に触れる。
その温もりが心地よくて、「幸せだなぁ」と実感する。
「えー…、ちょっと派手じゃない?私にはハードル高いよ」
「そんなことないって!葵は可愛いんだから何でも似合うよ」
あぁ、もう。また可愛い攻撃だ。
私のことを可愛いなんて言うのは茉奈だけだ。いちいちドキドキしてしまうし、どう反応したらいいのかわからなくなる。
「…茉奈」
「何ー?」
「私のこと、可愛いって言い過ぎ…」
「えー?だって可愛いんだからしょーがないじゃん」
茉奈が、シレッと雑誌をペラペラ捲りながら返事をする。
…私ばっかり振り回されて、何だか理不尽じゃないか?
不満を訴えるようにジトーっと見つめていると、茉奈と目があった。
「怒らないでよ〜」
「別に、怒ってない」
「ごめんって!…嫌だった?」
「それは…」
痛いところを突かれて、私はグッと言葉に詰まった。
…正直、私は_
「…嫌じゃない、けど…」
恥ずかしくて、声が小さくなってしまう。
俯いて、両手を太腿の上で握った。
「嫌じゃないから、困るの」
茉奈のことが好きだから、好きすぎてしまうから。
「可愛い」と言われるだけで、どうにかなってしまいそうになるのだ。
「…茉奈?」
…呆れられちゃった…?
茉奈の返事がないことに不安になって、顔を上げると_
「もう…可愛すぎるよ〜〜〜!!!」
「う、うわ!?」
ガバッと勢いよく茉奈に抱きつかれ、私は床に押し倒された。
「そんなこと言われたら、私も困っちゃうよ」
「え、ご、ごめん…」
「ちーがーう!可愛すぎて困るって意味!」
茉奈が、私の肩にグリグリと顔を押し付けてくる。
すっぴんお家デートならではのじゃれあいだ。
そのまま、茉奈の頭を撫でる。茉奈のサラサラの髪の毛は、触れると気持ちいい。
「…葵」
「ん?」
「キスしていい?」
「…いいよ…んっ」
上目遣いで聞いてきた茉奈を、「可愛いな」なんて思いながら返事をしたのに_
_あっという間に唇が塞がれ、私は身動きが取れなくなった。
ちゅ、ちゅ、と啄むように何度もキスをされる。
「ま、…な、くすぐった…んんっ!?」
茉奈を止めようと唇を開くと、茉奈の舌が口内に割り込んできた。
そのまま歯列をなぞられ、口内を舐めつくされ_
「ん、ふ…あ、」
頭がどんどん蕩けてきて、何も考えられなくなってきた。
すると、茉奈の手がするりと私のTシャツの下に滑り込んできて_
「っ…そ、それはまだダメッ!」
「えー」
茉奈を肩を押すと、不服そうに唇を尖らせられた。
「えーじゃないっ!」
「わかったよー」
不満そうな表情をしていた茉奈が、ニヤリと笑った。
「でも、“まだ”なんだ?」
「っ…!」
先程の自分の発言を思い出し、私の頬に熱が集まる。
確かに、さっきの自分は「まだダメ」って言った気がする!
「う、ううるさい!そんなこと言ったらずっとダメだから!」
「それは困る。ガチの方で」
「困ってろ!ばか!」
_あぁ、なんて平和で_幸せな日常。
こんな平凡な毎日が、ずっとずっと、続きますように。
■■■
おまけ
《SIDE 茉奈》
二人でもう一度座り直すと、葵が私に言った。
「さっきの話に戻るけど…私に可愛いなんて言うのは茉奈だけだよ」
「えー?そうかな」
言われて、ぎくりと背筋が凍った。
…ごめん、葵。
「小中高と告白されたこともないし」
…。
「よく話しかけてきてくれた男子はいたけど…何か急に避けられるようになっちゃって」
…。
だってそいつ、裏で他の男子達と葵の胸のサイズ予想して鼻の下伸ばしてたし…。
葵に近づく悪い虫は、徹底的に睨みつけてたからなぁ…。
「聞いてる?茉奈」
「きき聞いてるよ!?」
「嘘だ」
「嘘じゃないって!」
葵に軽く睨まれ、私は更に居心地が悪くなる。
「…あの、葵」
「な、何。急に改って」
「葵のこと、この世で一番好きなのは私だから」
だから、許してっ…!
恐る恐る葵の方を見ると、葵は頬を赤く染めていた。
何その表情、可愛すぎるでしょ。
「いきなり何なの…」
「ご、ごめん」
「っていうか」
「うん?」
葵が、視線を逸らしながら言った。
「…一番好きなのは、私もだから」
_あーもう、この子は本当に!
「葵〜〜〜!!愛してる!!」
「ちょっ、さっき起き上がったばっかなのに!」
勢いのままに、葵を押し倒す。
こんなに可愛い生き物が目の前にいるっていうのに、押し倒さないでいられるかっていう話だ。
…あー、幸せ。
願わくば、この幸せが_ずっとずっと、続きますように。
◆◆◆◆
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【百合】レズ活したら、失恋した美少女幼馴染と同じ顔が来た 昨日のメロン(きのメロ) @yesterday_melon
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